生命の維持について問う、桐野夏生さんの話題作が登場!
上田岳弘さんの新作では、友人の死を契機にした男性の心情が描かれます。
山内マリコさん吉田恵里香さんの対談は「シスターフッドの現在地」とこれから。
特集では、ノーベル賞受賞作家、ハン・ガン作品の魅力を分析します。

【連載】
桐野夏生「聞こえたり聞こえなかったり」
植物状態で人工呼吸器に繋がれている双子の妹・カノンの見舞いに行った渡部菜々子は、突然カノンの目玉が動き「ななこ」と呼ぶ声を聴いたことに動揺していた。生命維持装置を切るか、切らないか。考えながら菜々子は一人帰宅する。

【小説】
上田岳弘「マンサ・ムーサ」
証券会社の営業マンを辞め、FXトレーダーとして習慣化された日々を過ごす真々田。ある日、大学時代の同級生・木本の同僚から連絡が入る。登山を趣味にしていた木本が遭難して亡くなり、形見のピッケルを受け取ってほしいという申し出だったが――。

【小説短期集中掲載】
遠野遥「吸血鬼」(2)
美容外科クリニックを経営する白井は、男性が半期ごとに妻を替えるのも珍しくないなか、アナウンサーとして働く妻の美優を大切にし、契約を更新し続けることを望んでいた。美優は東京で開催されるオリンピック・パラリンピックの番組に抜擢され、多忙な日々をおくっている。

【対談】
山内マリコ×吉田恵里香「シスターフッドのその先へ」
デビュー以来、女性同士の友情を描いてきた山内さん。そして、『虎に翼』などの作品を通して女性の連帯やフェミニズムをめぐるテーマをエンタメに昇華してきた吉田さん。ふたりがシスターフッドの現在地とこれからについて語ります。

【特集:ハン・ガン 死と再生の文学】
ノーベル文学賞受賞記念講演で、「死者たちの助け」によって創作できたと語ったハン・ガン。その作品を読むと、登場人物の辛い境遇と引き換えのように、私たちは救われ、愛をかきたてられる。生者と死者のあわいを描くハン・ガンの作品世界にひたる。

講演/斎藤真理子「「ごはん」から見えてくるハン・ガンの文学世界」
ハン・ガン作品を長年翻訳してきて感じたその「ごはん」の描写の魅力。初期作品では食事を拒否する人物を描き続けていた作家が、大きく反転し、たどりついた境地とは。

論考/川村湊「漢江に注ぐ水流――ハン・ガンと「四・三事件」」
想像力と詩的言語を駆使し、歴史的事件をフィクション化したハン・ガン。『別れを告げない』で、作者が生まれる二十年以上も前の「済州島四・三事件」に肉薄できたのはなぜか。事件を書きついできた先人たちの作品に触れる。

論考/金ヨンロン「私はそれを見たいだろうか――ハン・ガン『別れを告げない』を読む」
文学を通じて、すさまじい暴力に直面した他者の、当事者の痛みを想像することは本当に可能なのか。ハン・ガン作品から、読む行為に伴う苦痛としての、「読みづらさ」を考える。

【第十回渡辺淳一文学賞発表】
受賞作 木下昌輝『愚道一休』
選評は浅田次郎、小池真理子、髙樹のぶ子、宮本輝の四氏。

【第四十回詩歌文学館賞発表】
受賞作 詩部門 中尾太一『フロム・ティンバーランド』
    短歌部門 中根誠『鳥の声』
    俳句部門 中村和弘『荊棘』
受賞の言葉、選評、受賞作抄録掲載。

【第50回すばる文学賞】
みずみずしく意欲的な力作・秀作をお待ちしています。募集要項は http://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/  をご覧ください!

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