
恥ずかしい時、悔しい時、モヤモヤする時……思わずネガティブな気持ちになったときこそ、読書で心をやすらげてみませんか? あの人・この人に聞いてみた、落ち込んだ時のためのブックガイド・エッセイです。
第41回:心がハチャメチャに傷ついてる時
案内人 カモシダせぶんさん
2025年04月15日
自分にとって嫌な指摘を受けた時や(自分が納得してるしてないにかかわらず)、自分の不甲斐なさに打ちひしがれる時、そして様々な環境で、人の心には傷がつく。
その傷が小さくて少しなら、時間と共に治ることもあるが、治る前に違う小さな傷が沢山ついたり、理不尽のチェーンソーでぶった斬られたりすると心が「ハチャメチャに傷ついてる」状態に突入する。こうなると時間だけでは解決しづらく毎日がしんどい。
そんな心の傷をまず「癒す」ことに集中できる本を紹介したい。
まずはこちら『マイメロディのマイメロセラピー』。

おいおい、我々大人にマイメロちゃんなんて、舐めてるのかい。そう思ったあなたの方が逆にマイメロさんを舐めすぎている。
サンリオで長年人気を誇っているマイメロさん。この本は、マイメロさんがTOKYO FMでやっていた同タイトルのラジオ番組のまとめ本だ。
要はお悩み相談番組なのだが、マイメロさんのファンが老若男女いることにより悩み自体がライトなものから根深すぎるものまである。(職場環境、不倫、心の病、年をとった自分への焦り等)
そんな悩んでる人たちに対してのマイメロちゃんのセラピーが凄すぎる一冊だ。
何が凄いのか。
マイメロちゃんは「正論」を無理に押し付けないのだ。
実は悩み相談に来ている人が必ずしもその悩んでる事象に関する正論を欲しているわけではない。正論は事象を解決する可能性は大いにあるが「傷を癒す」ことには向いてない場合がある。
傷を癒したい人には、正論だけではなく、その人を肯定する「優しい言葉」が必要なのだ。
マイメロさんのこの正論と優しさのバランス感覚が物凄いので是非読んでほしい。30代半ばの中年男性の私ですら、何回も号泣するぐらい素晴らしかった。ラジオのアーカイブも勿論良いが量が多すぎるので、初めての方にはこちらの傑作選的な一冊をお薦めしたい。
対象が人間ではなく、偶像(キャラクター)なのも良かったのかもしれない……。
続いて紹介したいのがJamさんの『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』

表紙の超優秀4コママンガを見てほしい。自分を傷つける人間のことを考えすぎる。とてもわかるし、それを恋するように考えると言われちゃうと「いや勿体無い!」と思えてくる。
表紙だけじゃなく中身も超優秀なメンタル本なので傷を癒したい方、こちらも是非。
プロフィール
-
カモシダ せぶん (かもしだ・せぶん)
1988年、神奈川県生まれ。松竹芸能所属。お笑いコンビ『デンドロビーム』として活動する傍ら、東京都内の書店で勤務する【現役書店員芸人】として「アメトーーク!本屋で読書芸人」など、メディアで数多くの書籍を紹介している。2013年「松竹お笑いビブリオバトル」優勝。Bibliobattle of the Year2023新人賞受賞。
関連書籍
新着コンテンツ
-
お知らせ2025年05月26日お知らせ2025年05月26日
温又柔特別エッセイ 未来のために過去を愛おしむ〜『恋恋往時』刊行に寄せて〜
最新刊『恋恋往時』刊行についての思いを著者の温又柔さんが寄せてくださいました。
-
新刊案内2025年05月26日新刊案内2025年05月26日
恋恋往時
温又柔
国境と言語を跨いで射し込む光に照らされた、日本と台湾、4つの物語。
-
インタビュー・対談2025年05月20日インタビュー・対談2025年05月20日
温又柔「「ふつう」じゃなくても大丈夫な場所を小説のなかに保ちたい」
社会が決めた「ふつう」からあぶれた彼女たちに温さんは優しい眼差しを向ける。その眼には何が映っているのだろうか。
-
お知らせ2025年05月17日お知らせ2025年05月17日
小説すばる6月号、好評発売中です!
新連載は池井戸潤さんの「ハヤブサ消防団」続編と、津村記久子さんの20年にわたる友情の物語の2本立て!
-
連載2025年05月15日連載2025年05月15日
【ネガティブ読書案内】
第42回 年森瑛さん
「言わなくていいことを言ってしまった時」
-
インタビュー・対談2025年05月09日インタビュー・対談2025年05月09日
藍銅ツバメ「キャラクターの執心に惹かれ」
執筆のために殺陣教室にて体験レッスンを受講した藍銅さん。経験と想像力、そして好奇心について伺った。