内容紹介
資本主義の進む近未来のアメリカで、刑務所の囚人たちに釈放をかけて殺し合わせる「スポーツ」が誕生した。サブスクリプション配信される彼らの死闘とその終わりに、多くの人々が熱狂する……。
『フライデー・ブラック』の著者が、人種差別や消費社会を痛烈に皮肉る、文芸×SF×エンタテインメントの衝撃長篇!
ニューヨーク・タイムズ紙の年間のベスト10に選出された、
全米図書賞最終候補作、アーサー・C・クラーク賞最終候補作。
スティーヴン・キング絶賛!
原題:CHAIN-GANG ALL-STARS
プロフィール
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ナナ・クワメ・アジェイ・ブレニヤー (Nana Kwame Adjei-Brenyah)
ガーナ移民の両親のもと、アメリカのニューヨーク州スプリング・バレーで育つ。ニューヨーク州立大学オールバニ校を卒業し、その後シラキュース大学でジョージ・ソーンダーズらに学び、MBA(芸術修士)を取得した。
デビュー作の短篇集『フライデー・ブラック』(押野素子訳/駒草出版)はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト入りを果たし、PEN/ジーン・スタイン賞およびウィリアム・サローヤン国際文学賞を受賞した。
また初の長篇小説である本書『チェーンギャング・オールスターズ』は全米図書賞とアーサー・C・クラーク賞の最終候補作に選ばれたほか、2023年ニューヨーク・タイムズ紙の年間のベスト10冊に選出された。
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池田 真紀子 (いけだ・まきこ)
1966年東京生まれ。上智大学卒業。1997年アーヴィン・ウェルシュ『トレインスポッティング』(角川文庫、その後ハヤカワ文庫NV)でBABEL国際翻訳大賞新人賞を、2024年ジョセフ・ノックス『トゥルー・クライム・ストーリー』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞翻訳部門を受賞。そのほかジェフリー・ディーヴァーの『ボーン・コレクター』(文文春文庫)をはじめとするリンカーン・ライムシリーズ、チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』(ハヤカワ文庫NV)、スティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』(河出文庫)など訳書多数。
書評
彼女らは殴りあうだけではない
霜月 蒼
海外文学ファンのみならず、ポップカルチャーに関心のある読者までも惹きつけた『フライデー・ブラック』のナナ・クワメ・アジェイ゠ブレニヤーの初長編が、こんな小説になると誰が予想しただろう! 何せ冒頭から、巨大なトンカチなどの凶器を手にした二人の女闘士が、大観衆と実況中継の中、闘技場で殺しあいをはじめるのだ――!
まるでアメリカのカルト・アニメ『ヘヴィメタル』(画像検索してみてね)みたいな絵面であり、格闘ゲームのようであり、日本のマンガ「刃牙」シリーズや『はぐれアイドル地獄変』さえも思い出させるとんでもなさ。
これが〈チェーンギャング・オールスターズ〉、近未来のアメリカで民営化された刑務所が主催するお茶の間で大人気のコンテンツなのだ。受刑者たちは刑務所ごとのチームで全米をツアーし、死の戦いを繰り返す。三年間生き残れば無罪放免。冒頭でジャイアント・キリングを成し遂げた主人公サーウォーが、あと数試合で放免というところで本編ははじまる。命がけの試合を繰り広げ、チームメイトとともに次の街へ旅をしながら、サーウォーとその盟友であり恋人でもあるスタックスという二人のアフリカ系女性をリーダーとしたチームは、最後の大勝負の場へと向かってゆく――
という一気読みのアクション・スリラーとして読める本書だが、それだけではない。折々に挟まれる脚注――本編とは異質な硬質の韻文で囁かれる短文たちが、活劇=暴力の娯楽に陶酔しかける私たちに冷や水をかけるのである。私たちがいる世界の現実を伝えることで。本書が権威ある文学賞、全米図書賞のフィクション部門最終候補になったのはそのせいだろう。
つまり本書は諷刺文学なのだ。だが、諷刺がしばしば陥る頭でっかちな冷笑はここにはない。それはそうだろう、アジェイ゠ブレニヤーが込めたのは冷笑などという悠長なものではなく、激烈な怒りだからだ。ゆえに本書は熱く、その義憤の熱が、活劇の熱によってさらに熱されて、読む者に向けて撃ち込まれる。
「青春と読書」2月号転載
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