担当編集のテマエミソ新刊案内
愛と笑顔があれば人生せわーねー(大丈夫)!
岡山弁が飛び交う奉還町商店街で、あゆみは雑貨カフェ「セワーネ」を営んでいる。一昨年に乳ガンが発見された。手術も治療も順調だが、夫の雅彦は心配でならない。
福男になりたくて西大寺裸祭りに参加するものの敢え無く途中で失神。早く帰宅したいから部長を辞めさせてくれと社長に直訴。すべて妻のためだ。そして遂に“で~れえ(すごい)”ことを思いつくのだが、その先は是非お読みいただいてのお楽しみ。
大騒ぎする雅彦を、ばっかじゃねぇという顔で見る息子に、あゆみはこう諭す。
「生きているって、何もないことや、悲しいこと、辛いことの方が多いんよ。じゃから笑顔がうれしいの。お父さんの明るい笑顔はみんなを救っているんよ。ガンになってからもお父さんの笑顔がどんな薬より身体にいいって思っとるんよ」
『翼はいつまでも』で坪田譲治文学賞を受賞(2001年)した著者、川上健一さんの小説に登場する主人公たちはいつも愚直なまでにまっすぐだ。
編集作業中、何度も自問自答した。というかさせられた。
「僕(担当編集50代)も雅彦のように、妻を愛することができる?」
自信はない(笑)。でも、まずは笑顔から始めることならできるかもしれない。きっとお読みいただいた人もそう思ってくれるはず。そんな温かい小説なのである。
著者プロフィール
- 川上健一かわかみ・けんいち
- 1949年青森県十和田市生まれ。県立十和田工業高校卒業。77年『跳べ、ジョー! B・Bの魂が見てるぞ』で第28回小説現代新人賞を受賞し作家デビュー。90年『雨鱒の川』刊行後休筆。2001年『翼はいつまでも』が「本の雑誌」年間ベスト1に選ばれ、翌年、第17回坪田譲治文学賞を受賞。青春小説、スポーツ小説を数多く手がける。