プロフィール
-
青山 七恵 (あおやま・ななえ)
1983年、埼玉県生れ。筑波大学図書館情報専門学群卒業。2005年「窓の灯」で文藝賞受賞。2007年「ひとり日和」で芥川賞受賞。2009年「かけら」で川端康成文学賞を受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『すみれ』『めぐり糸』『風』『ハッチとマーロウ』『私の家』『みがわり』『はぐれんぼう』『前の家族』などがある。
担当編集より
私は、読後にもたらされた深い感情を赦(ゆる)しと名づけたかった。──平松洋子
10月4日(金)に発売となった青山七恵さんの最新作『私の家』は、ある一族を三つの世代の視点から描いています。
恋人と別れて突然実家に帰ってきた娘・梓。
年の離れたシングルマザーに親身になる母・祥子。
幼少期を思い出させる他人の家に足繁く通う父・滋彦。
孤独を愛しながらも三人の崇拝者に生活を乱される大叔母・道世。
何年も音信不通だった伯父・博和──。
そんな一族が、祖母の法要の日に集うことに。
伯父と長年連絡がつかなくても「しかたない」ですませるようなところがある“クールな家系”なので、みな、自分の思っていることを全部話すわけではないし、家族だから分かり合えるとも思っていません。
祥子の、亡くなった母に対する思いは複雑です。
「お母さんが何を考えてたのか、あたしはいまでもよくわからない。子どもができたら、年とったら、お母さんの気持ちがわかるんじゃないかと思ってたけど……わかったような気もしたことがあるけど、やっぱり本当のところはわからない」
掴みがたい母の感情が生まれる心の土壌を理解しようとしたけれども、それが叶わず今も諦めきれない祥子に、彼女の姉の純子はこう言います。
「あたしたちにはわかんなくても、この子たちが大きくなったとき、ある日いきなり、お母さんの気持ちがわかるかもしれない。(中略)だってあたしたちが自分で発見したつもりになってるどんな気持ちだって、ほんとのところはあたしたちのおじいさんおばあさんとか、そのまたおじいさんおばあさんが、誰にもわかってもらえなかったその気持ちかもしれないんだからね」
また、それぞれの心がいつも帰っていく(あるいは囚われている?)「家」も、生まれ育った家だったり、子供の頃預けられていた母の実家だったり、自分が手に入れた今の家だったり、バラバラです。
博和はこう思っていたと言います。
「最初は家を出れば、もう苦しまないですむと思ってたんだよ。僕も母さんも苦しいのは、二人が家族だっていう以前に、家っていう場所、どっちかが待ったり待たれたりする、どうしてもこの地球上から消せない、家っていう一つの場所があるからなんじゃないかと思って……(中略)でもそうはならなかった。どんなに根無し草を気取ってみても、逃げてきた家とはまたべつの、見えない家があるって気づいたから。その家は僕にずっとついてくる。(中略)その家の窓を通してしか、この世のなかを眺められない……」
血縁とはいえ別な人間。心も思い出も赤の他人のようにすれ違うのですが、法要での再会によって、一族は、同じ家に暮らした記憶と小さな秘密に結び合わされていることを知るのです。
これまでも家族を描いてきた著者が、“パーソナルな部分が反映された作品”と語る『私の家』。
ぜひ、三世代の男女がそれぞれに胸に抱えている「家」という場所や「家族」という存在に対する一筋縄ではいかない思いに触れてみてください。
(編集H)
新着コンテンツ
-
インタビュー・対談2026年02月06日
インタビュー・対談2026年02月06日ピンク地底人3号×鳥山まこと「言葉と物語が立ち上がるまで」
選考委員も「好対照」と評した作品で第47回野間文芸新人賞を同時受賞したお二人。贈賞式から間もない高揚感のままに、語り合っていただきました。
-
お知らせ2026年02月06日
お知らせ2026年02月06日すばる3月号、好評発売中です!
新作小説は上田岳弘さん、古川真人さん、佐倉ユミさん、三角みづ紀さんの4本立て。ピンク地底人3号さんと鳥山まことさんの対談もお見逃しなく。
-
インタビュー・対談2026年02月05日
インタビュー・対談2026年02月05日北方謙三「歴史に仮託して現代人の心情や行動原理を書く。それが私の歴史小説であり歴史小説観です」
40年来のファンから、最近読み始めたという方まで、幅広い読者が集つどった熱気あふれるイベントの一部をお届けします。
-
新刊案内2026年02月05日
新刊案内2026年02月05日森羅記 二 揺籃の塵
北方謙三
クビライ、ついに大モンゴル国の帝に。さらなる脅威に鎌倉幕府は、いかに立ち向かうのか……。蒙古襲来を描いた歴史巨編、堂々第二巻!!
-
新刊案内2026年02月05日
新刊案内2026年02月05日超巨大歩行機ゴリアテ
椎名誠
椎名誠が独自の言語感覚で紡ぐ、ファン待望のSF短編集!
-
新刊案内2026年02月05日
新刊案内2026年02月05日粉瘤息子都落ち択
更地郊
第49回すばる文学賞受賞作。パワハラで退職した主人公の、だるくて切実、くだらないのに沁みてくる、令和最強の“底辺”青春小説。