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爽年

爽年

爽年

石田衣良 著
2018年4月5日発売
ISBN:978-4-08-771139-4
定価:本体1400円+税

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松坂桃李主演映画化で話題!「娼年」シリーズ最終章
―始まりはこのバーだった。
娼夫リョウが巡る、性の深淵をのぞく旅の物語。

『娼年』映画化記念対談
石田衣良×松坂桃李

妄想すること、しっとりすること

娼夫である主人公リョウと様々な女性たちのセックスを美しく描いた『娼年』がついに映画化。原作者の石田衣良と、リョウを演じた主演の松坂桃李に、本作とセックスについて、たっぷり語っていただいた。

  • 原作者の石田衣良と、リョウを演じた主演の松坂桃李
──原作者の目から見て、松坂さんが演じられた森中領(リョウ)をどう思われましたか。

石田 リョウ君の役は俳優さんのキャラクターの中に透明感というか、ある種の澄んだ感じや孤独感がないと成り立たないんですよ。そういう点で、松坂さんはどんぴしゃの配役だったなと思いますね。

松坂 ありがとうございます。僕もこの役をやれたのは、自分の本質的なものとかぶるところがあったからじゃないかと思います。それに三浦(大輔)監督が、舞台をやった上で映像もやるということで、『娼年』を完成させたいという思いをスタッフ、キャストが共有できたということも大きかったですね。いろいろな要素に支えられて、自分の中でリョウをまっとうできたというか、リョウに向き合えたのかなと思うんです。

石田 変な人がやると、ほんとに嫌らしくなっちゃう役ですからね。リョウ君という役をどう捉えていらっしゃいますか。

松坂 根本にすごく大きい海を持っているような人だなと思ったんですよね。

石田 そうなんだ! かっこいいね。

松坂 自分の中に大きい海を持っている人で、女性と出会うことによって、徐々に自分の海の広さと深さを知っていくという感じですね。遠くまで泳ぎたい、もっと潜ってみたい、と。

石田 原作者としてはすごく嬉しい言葉ですね。「大きい海を持っている人」、今度使おう(笑)。舞台版からだから、リョウ君という役に関わって、けっこう長いですね。

松坂 そうですね。舞台が終わってから、映画化という情報がわりと早く入ってきたので、けっこう長い間、頭の片隅にずっとありましたね。もう一度、リョウをやるんだということが。

石田 舞台版はチケットがすぐに売り切れて、連日立ち見が出るほどの人気でしたよね。伝説の舞台みたいになってしまったから、映画化するにあたってはプレッシャーもあったろうし、ハードルは高かったんじゃないですか。

松坂 怖かったし不安でしたね。でも、映像のいいところは、舞台を見られなかった人にも届けられることなので、映画化が決まったときにはやっぱり嬉しかったです。しかも、より完成された『娼年』を届けられるわけですし。

石田 映像だと近くに寄って見ているようなものだから、桃李君の身体にも注目が集まるよね。背中とか、お尻とか、きれいだったけど、やっぱりかなり身体は絞りましたか?

松坂 段階をつけようと思いました。最初は普通の大学生なので、たぶん静香さんが見抜いたのはいい身体をしているとかではないと思うんですよね。もっと内面的な部分だと思うので。でも、女性たちと行為をしていくことでリョウの意識が自然に身体に向かっていったんじゃないかと。

石田 なるほどね。映画の中で物語が進んでいくと身体が変化しているんですね。

松坂 そうですね。ですから、クランクイン前はあまり身体のことは気にしなかったですね。撮影の順番も、ストーリーの順番通りに撮影しているわけではないですけど、身体を見せるシーンは時系列に近かったですね。

石田衣良

いしだ・いら
'60年東京都生まれ。'97年『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。'03年『4TEEN』で直木賞を、'06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞を、'13年『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。『スローグッドバイ』『逝年』『オネスティ』など著書多数。
──松坂さんは原作はお読みになったんですか。

松坂 舞台のときに読ませていただきました。そのときに思ったのが、妄想することってやっぱりいいことじゃんってことなんです。僕、よくインタビューで、好きな女性のタイプは? って聞かれたときに、妄想するのが得意な人が好きだって言っているんですよ。

石田 なるほど。いいですね。

松坂 妄想するってことは、いろんな考えを否定せずに膨らませることだと思うんです。これは男女ともに言えることですけど、いろいろなことに対してもっと多面的なものの見方をするという言い方もできるかもしれない。世の中には一面的なところしか表現していない人が多いけど、本当はもっと多面的なはず。そこに魅力があると、原作の『娼年』を読んであらためて思ったんです。

石田 本当にその通りで、妄想だったり、多面的なものの見方だったりというのは今を生きる上でのキーだと思いますよ。要するに、セックスって行為自体はわりと単純ですよね。だけど、それをどう味つけするか、どう展開するか、どう深めていくかということには、想像力や感受性が不可欠なんですよね。だから、「小説すばる」の読者に言いたいのは、たまにはこういう映画を見て、しっとりしてほしいということです。今、時代がギスギスしていますし、生きているのが辛そうな人たちが多いじゃないですか。ほんとにみんなしっとり感が足りない。それを補うには『娼年』のような性愛を描いた映画はすごくいいと思います。できれば彼氏、彼女と見に行ってほしいね。

松坂 そうですね。

松坂桃李

まつざか・とおり
'88年神奈川県生まれ。'09年『侍戦隊シンケンジャー』でデビュー。'11年『僕たちは世界を変えることができない。』『アントキノイノチ』の二作でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞とヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。映画、テレビドラマ、CMなど多方面で活躍。

石田 桃李君がね、いいことを言っていたんですよ。「『あの映画で松坂桃李がこんなことしてたよ』って言いながら、やってほしい」って。あれは名言ですよ。

松坂 (笑)。

石田 ところで、舞台版と映画版の脚本は、大分違うの?

松坂 いや、ほぼ変わらないです。

石田 そうか。いや、僕、実は舞台版を見たときに、小説で僕が書いた台詞がかなりそのまま使われていて、ああ、やっぱり僕の文章って、ちょっと硬いなとか思っていたんですけど、映画にはその違和感がないんですよ。実は、映画版で脚本を大分変えてきたんだろうと思っていたんです。ということは、さらに一段こなれてきているのかな。

松坂 そうかもしれないですね。じわじわ浸透してくる感じがしました。映画って撮影中、長い時間を役と一緒に過ごしているので、浸透してくる感覚はすごくありましたね。

石田 撮影現場はどうでした?

松坂 いや、もう何って言ったらいいんでしょう。記憶が飛ぶぐらい、みんな心身ともに打ち込んでいましたね。身をどんどん削られていくような感じで。その日一日の撮影を終えるとぐったり。でも、翌日には自然と撮影に入るんですけどね。

石田 そんなに苛酷な現場だったの?

松坂 三浦さんが妥協しないんです。

石田 ああ、そう。三浦さんは粘るほうなんだ。

松坂 めちゃくちゃ粘ります。

石田 大変だ。しかも、ベッドシーンをだめ出しされたって、そんなに変えられないよね。

松坂 変えられない。どうしようという大変さもありますし、三浦さんには噓が通用しないんですよ。というのは、役者さんって、僕はまだまだですけど、経験を積み重ねていくと、ある程度はごまかせる技術が身につくんですね。この場を乗り切るためにはこうやるとか。それが三浦さんには一切通用しないので、本当にマックスを出さないと立ち向かえない。

  • 原作者の石田衣良と、リョウを演じた主演の松坂桃李

石田 今、自分のマックスが出たなという感覚と、監督の評価は合っているの?

松坂 違いますね。たぶん、自分のマックスが出たなという感覚は、監督にとって本当のマックスじゃないんです。まだまだできる。

石田 追い込むね。

松坂 すごいです。

石田 面白いね。ベテランの西岡(德馬)さんもよかったものね。役としても一番おいしい役だったけど。

松坂 ああいう演技ができるあの年代の俳優さん、すごいと思いますね。張り詰めたシーンが多い中で、変な言い方ですけど、一服の清涼剤みたいな、ちょっと笑えるシーンでもあるんです。三浦さんも舞台のときからそういうシーンとして演出されていましたし。でも、見終わって、全部ひっくるめて総体として見ると、大事な心理描写なんですよね。

石田 いやあ、面白かったですよ。というか、近年の日本映画には、『娼年』に似ている作品がまったくない。すごくオリジナルな映画に仕上がっていましたね。それを確かめに映画館に来てほしいな。ああ、こういう大人の映画、大人のカップル同士が見に行ける映画が日本にもあったんだね、という映画だと思います。

構成/タカザワケンジ
撮影/chihiro.
松坂桃李ヘアメイク/高橋幸一(Nestation)
松坂桃李スタイリスト/伊藤省吾(sitor)
『娼年』4月6日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国にて公開。
©石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

爽年

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石田衣良 著
2018年4月5日発売
ISBN:978-4-08-771139-4
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シリーズ累計100万部突破!「娼年」三部作完結編、『爽年』

全篇ベッドシーンの小説を、という試みから生まれた至高の三部作──

今から17年前、著者の石田衣良氏がお茶の水のとあるホテルのカフェで、紙ナプキンに万年筆で何かをさらさらと書きつけ、担当編集にさっと滑らせた。
そこに書かれたタイトルが、『娼年』だったという。

今作『爽年』の舞台は、リョウが娼夫となってから7年後。
非合法のボーイズクラブで働き始めたころは大学生だったリョウも、今作では成熟した大人の男性に成長。

性の絶食化が進む現代日本で、心に秘めた欲望を胸にクラブの戸をたたく女性たちと過ごす、「もう死んでしまってもいい」くらい特別な夜は、前作を超える美しい凄みがある。

40代の処女、アセクシュアル、男性恐怖症の女性…リョウを買う「彼女」たちの心の叫びは、いつか自分の中から生まれてきてもおかしくないものばかり。

第一作から17年のときをへて、『爽年』だからこそ描けた「娼夫」にしか知りえない性の深淵。

あなたも彼を買ってください。

(担当KM)

著者直筆メッセージ

  • セックスが、なぜこれほど切なく透明なのだろう。娼年3部作 完結『爽年』石田衣良

著者プロフィール

石田衣良いしだ いら
1960年生まれ、東京都出身、成蹊大学卒業。97年、『池袋ウエストゲートパーク』で第36回オール讀物推理小説新人賞を受賞。以降、2003年『4TEEN フォーティーン』で第129回直木賞を、06年『眠れぬ真珠』で第13回島清恋愛文学賞を受賞。13年には、『北斗―ある殺人者の回心』で第8回中央公論文芸賞を受賞。

爽年

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石田衣良 著
2018年4月5日発売
ISBN:978-4-08-771139-4
定価:本体1400円+税

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