いよいよお出かけできる春の到来!
芸術に触れたいあなたには、目からウロコの気づきをもたらす「文学×アート」特集を。
奥田亜希子さん、上村亮平さんの新作でも、新たな視点を得られるかも!

【小説】奥田亜希子「ポップ・ラッキー・ポトラッチ」
総理大臣になる。卒業文集の「将来の夢」にそう記してから十五年後、保育士の資格を持った相田愛奈はコロナ禍の東京にいた。訳あって現在は無職だが、焦る気持ちはない。相田愛奈の銀行口座には、約二億円が入っていた。

【小説】上村亮平「ノラ」
ノラ、それは「私」が世話をしながらこっそり呼んでいた名まえだった。「二人で世話をするから」とその子山羊を飼うことを懇願した幼い兄弟に、父親は「名まえなんてつけるんじゃないぞ」と言ったからだ――。

【特集:文学×アート 語りえぬものを創造する】

簡単には伝えられない何かを伝えようと、表現者たちは創作に励んでいる。文学は言葉を研ぎ澄まして、アートはあらゆる造形を通じて。別々のアプローチから見えてくる差異と接続点、そこに眠る表現の可能性を探る。

対談/諏訪敦×朝吹真理子「不可逆の時間に手を伸ばして」
取材を重ね、膨大な時間の蓄積から描く対象の姿をつかみ取ろうとする画家の諏訪氏。作品世界において、現在と過去の重なりや時間の移ろいを描いてきた小説家の朝吹氏と、創作について語っていただいた。

短編/石沢麻依「トルソの手紙」
ポプラ雪と呼ばれる白い綿毛が舞う朝、エレナの従妹が家を訪れた。玄関先に立つのは白いトルソ姿の従妹のT。エレナの説明によると、元恋人との手紙のやり取りに消耗したTは、声を失いトルソ姿へと変容してしまったらしい。

短編/山内マリコ「ふわふわ、ゆらゆら、ストン」
高校三年生の「私」は、友達のまほちゃんに連れられ美術予備校に通い始めた。行きたい場所も、やりたいこともない受け身の「私」はやがて、自分向きと思えた木炭デッサンを武器に彫刻科を受験し……。

短編/乗代雄介「三舟山」
小説家の春諏訪石句と、助手の大学生・宮守森一。小説になる良いネタを求め三舟山を訪れた二人の前に、奇妙な男が現れる。少年と中年の混ざり物のような男は、「ゲージツ」に関係する「良いもん」のもとに案内してくれるというが……。

インタビュー/川内有緒「〈間違い〉が存在しないアート鑑賞」
昨年の刊行以降、広く話題となったノンフィクション作品『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』。著者の川内氏に、全盲の白鳥さんとの美術鑑賞の詳細や、アート作品が持つ力について伺った。

ルポ/滝口悠生「知らぬ間に知っている――ファーレ立川 岡﨑乾二郎『Mount Idaイーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)』」
撤去の予定から一転、急遽保存が決まった本作品。三回にわたって立川を訪れた滝口さんの前に、変わらず作品は在り続け……。

ルポ/石田夏穂「いちばん大きな窓――ポーラ美術館「部屋のみる夢」」
2月某日、雪の残る箱根を訪れた石田氏。ポーラ美術館で開催中の「部屋のみる夢」展は、美術作品を「部屋」というテーマで捉える試みだ。部屋にいることを余儀なくされた数年間を経て、遠出の喜びを噛みしめ、館内を散策し、絵画を鑑賞する実録ルポ!

ロングエッセイ/高山羽根子「あっち側にいたときの切実と、東京のこの数年」
新聞連載で美術評を担当する高山氏。この数年、評者として関東甲信越の展示をめぐるうちに目にしたアートシーンの変化を記録し、かつて描き手として展示会に立っていたころを追想する。

ロングエッセイ/ミヤギフトシ「首里の谷、ウェビナー、取り替え子、ロキ」
映像の、写真の、目の前のイメージ全てを、言語化することは可能なのか。映像作品に写真、小説と表現の境を跨いで創作活動を行う著者が、日常と接続した思考の流れを綴る。

ロングエッセイ/金子信久「江戸絵画が楽しい理由」

金子氏が勤める府中市美術館では毎年「春の江戸絵画まつり」が行われている。若冲や応挙、蘆雪から徳川家光まで多彩な描き手の作品が愛され、今なお注目される理由を探る。

ロングエッセイ/松川綾子「展覧会の思い出」
今年開館50周年を迎える奈良県立美術館で学芸員として働く松川氏。奈良に縁ある「まぼろしの画家」不染鉄の作品と出会い展覧会開催に向け奮闘した日々、懐かしくも幻想的な雰囲気漂うその作品の魅力を存分に綴る。

プレイヤード美術 拡大版/橋本麻里「東洋美術史を書き換える、歴史的展覧会を観よ」
今秋、東京・根津美術館にて開催が予定される「北宋書画精華」展。日本美術のそもそものルーツでありながら、西洋美術に比べ国内での認知度は低い中国美術。その極めて重要な作品が集められる特別展を紹介!

【追悼 大江健三郎】
島田雅彦「誠実な楽観主義」
中村文則「指針として」
小森陽一「大江健三郎さんの死を悼む──「座談会昭和文学史」の記憶から」

【講演】温又柔「言葉の居場所を探して――李良枝再読のために」
昨年、没後三十年を迎えた作家の李良枝。いま彼女の作品に向き合うにあたり、私たちは何を考え、何を問えばよいのか。李良枝作品に力を得ながら小説を書き続けてきたと語る、温氏によるシンポジウム基調講演を載録する。

【第48回すばる文学賞】
みずみずしく意欲的な力作・秀作をお待ちしています。募集要項は http://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/  をご覧ください!

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