第八回 渡辺淳一文学賞 贈賞式 選考委員講評と受賞者の言葉
2023年06月22日更新
2023年5月19日、本年度渡辺淳一文学賞の贈賞式が執り行われました。
今回は来賓にもご出席いただき、式典に数年ぶりの賑やかさが戻ってきました。 選考委員と受賞者のスピーチの様子を一部抜粋にてご紹介いたします。
受賞作 古谷田奈月さん『フィールダー』集英社刊
選考委員代表 小池真理子さん
講評 小池真理子さん
「私は普段SNSを全くやっていないが、今回は気になって調べてみた」と口火を切り、「この作品が何かの賞を獲らなければ現代日本文学を疑う、という意見があった。疑われなくて本当に良かった」と、選考委員を代表し小池真理子さんは晴れやかな表情で講評を述べられました。
あらすじが複雑かつテーマも多岐にわたることに選考会では厳しい意見も出たことにも触れながら、「それでも受賞作に推したのはひとえに古谷田さんの熱量の高さ。表現したいことがありすぎてコップから溢れてしまうほどの過剰な純粋さに胸を打たれた」と力強く評しました。現代社会に対する批判とその考察の深さに感じ入りながらも「社会学者のように分析しようとか、哲学者のように論じようとはしていない。小説に小賢しさがない。それが読んでいて気持ち良い」と率直な賛辞を贈られ、「様々な新しい分野でも大活躍されることと思います」と期待を寄せられました。
受賞者 古谷田奈月さん
「読むのにとても体力の要る作品だと思うので、最後まで読んでいただけた、そのことにまず感動している」と選考委員の方々、そしてすべての読者に感謝を述べながら、贈賞式の舞台に立つまでの心境を語られました。
この日この場で言うべき言葉を練ってきたものの、直前に渡辺淳一氏のご家族とお話しする機会があり、「一読者として非常に細かく読んでくださっていた。小説で食べていくのは大変だけどこれしかないんですと言ったら『でもこれがあるじゃないですか!』と背中を押していただいた」という経緯から「どうでもよくなってしまった」と顔を綻ばせ、スピーチ原稿を置いてきたことを振り返り、この大きな激励を胸に今後も執筆活動に邁進されることを誓われました。
新着コンテンツ
-
お知らせ2024年05月02日お知らせ2024年05月02日
すばる6月号、好評発売中です!
村田沙耶香さんの「世界99」が堂々完結。最新刊『グリフィスの傷』刊行記念の千早茜さんと石内都さんの対談も注目!
-
インタビュー・対談2024年05月01日インタビュー・対談2024年05月01日
千早茜×石内都「傷痕の奥に見えるもの」
千早茜さんが今作の着想源にしたのは、世界的写真家の石内都さんの傷痕をテーマにした作品群。お二人にとっての書くこと、撮ることとは。
-
インタビュー・対談2024年04月26日インタビュー・対談2024年04月26日
千早茜「十人十色の「傷痕」を描いた物語」
短篇ならではの切れ味を持った十篇、それぞれにこめた思いとは。
-
インタビュー・対談2024年04月26日インタビュー・対談2024年04月26日
小路幸也「愛って何だろうね。何歳になってもわからないよ」
大人気シリーズの『東京バンドワゴン』も第十九弾。今回のテーマ「LOVE」を、ホームドラマでどう料理するか。その苦心と覚悟とは。
-
新刊案内2024年04月26日新刊案内2024年04月26日
キャント・バイ・ミー・ラブ 東京バンドワゴン
小路幸也
愛を歌って生きていく。いつにも増して「LOVE」にあふれた大人気シリーズ第19弾!
-
新刊案内2024年04月26日新刊案内2024年04月26日
グリフィスの傷
千早茜
からだは傷みを忘れない――「傷」をめぐる10の物語を通して「癒える」とは何かを問いかける、切々とした疼きとふくよかな余韻に満ちた短編小説集。