内容紹介
高階唯子(たかしな・ゆいこ)は警察から依頼され、事件被害者やその家族のカウンセリングを行っている。
彼女は様々な傷を抱えたクライエントと向かい合う。
夫を殺されたのに自分こそ罰を受けるべきだという妻。
誘拐犯をかばい嘘の証言をする少女。
心の傷から快復したはずなのに、姉を殺した加害者に復讐した少年……
多くを語らないクライエントが抱える痛みと謎を解決するため、唯子は奔走する。
絶望の淵で、人は誰を想い、何を願うのか。そして長い沈黙の後に訪れる、小さいけれど確かな希望――。
80万部突破「MOMENT」シリーズ、ドラマ化で話題となった『dele』の著者が贈る、深く胸に響く物語。
プロフィール
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本多 孝好 (ほんだ・たかよし)
1971年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。94年「眠りの海」で第16回小説推理新人賞受賞。99年、受賞作を収録した短篇集『MISSING』で単行本デビュー。2003年『MOMENT』、04年『FINE DAYS』で2年連続吉川英治文学新人賞候補。05年『真夜中の五分前』で第132回直木賞候補、10年『WILL』で第23回山本周五郎賞候補。他に『MEMORY』『ストレイヤーズ・クロニクル ACT 1~3』『チェーン・ポイズン』『at home』『君の隣に』『dele 1~3』『アフター・サイレンス』『こぼれ落ちる欠片のために』など著書多数。
二つ目の傷痕
デスクの上の彼女の手が小さく震えている。私は彼女の右斜めからその様子を見守っていた。私たちが座る二脚の椅子は、九十度の位置、デスクの隣り合う辺に向いている。私の左に彼女。彼女の右に私。直接、視線が合うことがないこの着座位置が、カウンセリングには適した座り方だとされる。実際、彼女は、時折、私のほうを見はするものの、大抵は正面にある窓へと視線を向けていた。
私は彼女の表情に注意を移した。
この部屋に入ってきたとき、彼女は意外なほど落ち着いていた。
「高階唯子(たかしなゆいこ)さん。唯子さんって可愛らしい名前ですね」
私の名刺に目を落とし、そう微笑んでさえ見せた。が、私が改めて自己紹介をして、自分の守秘義務について説明し、同意書にサインをもらい、この三週間の生活ぶりを聞いている間に、彼女の表情は失われていった。それがおかしなことだとは思わない。事件からまだ三週間。普通でいられるほうがどうかしている。ずっと平静を装っていた彼女が、徐々に素顔を見せている。私はそう受け取った。
書店員さんから賞賛の声、続々!!
谷島屋 ららぽーと沼津店・小川誠一さん
私の家族がもし犯罪に巻き込まれたら、と考えさせられる。
そして被害者/加害者家族の苦しみはどこに行くのだろう……。
ミステリー的要素を持ちながら、人に寄り添う力の素晴らしさを謳いあげた傑作。
丸善 津田沼店・安井理絵さん
加害者と被害者、そしてその家族。犯罪による悲しみの連鎖に絶望しそうになる。
でも、自身も痛みを抱えながらも、必死にクライエントを理解し、支えようとする主人公の姿に引き込まれた。
彼女の思いが彼らに届くことを願わずにいられない。
東京旭屋書店 新越谷店・猪股宏美さん
深々とした悲しみが胸の底を流れていくようだった。
簡単に面白かったとか希望があったとか言いたくない、重さのある物語だった。
その重さをしっかり受け止めたいと思った。
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