![ミシンと金魚](https://www.bungei.shueisha.co.jp/app/uploads/shinkancover-mishintokingyo.jpg)
内容紹介
「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」
ある日、ヘルパーのみっちゃんから尋ねられた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。
母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。
やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が膨らみだして……
この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。
誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す号泣必至の物語です。
プロフィール
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永井 みみ (ながい・みみ)
1965年神奈川生まれ。2021年『ミシンと金魚』で第45回すばる文学賞を受賞しデビュー。同作は三島由紀夫賞、野間文芸新人賞にノミネートされ、「ダ・ヴィンチ編集部が選ぶプラチナ本OF THE YEAR! 2022」に選出された。その他の著書に『ジョニ黒』がある。
受賞のことば
永井みみ
ほんとうは、作家になりたかった。
劇団の裏方をやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
コピーライターをやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
下北でバイトをやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
ヘルパーをやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
専業主婦をやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
手抜き料理をつくっているときも、ほんとうは、作家になりたかった。
寝転んでワイドショーを見ているときも、ほんとうは、作家になりたかった。
風呂で鼻歌うたいながら、ほんとうは、作家になりたかった。
濃いあごひげを寄り目で抜いてるときも、ほんとうは、作家になりたかった。
今年のはじめ。
コロナで死にかけたときは、作家として死にたかった、と心底悔やんだ。
でも、まさか、ほんとうになろうとは。
これからは、ほんとうの、作家になりたい。
選考委員のみなさま、編集部のみなさま、すべてのみなさま、かぞく、ほんとうに、ありがとうございました。
(初出「すばる」2021年11月号)
選考委員絶賛!
小説の魅力は「かたり」にあると、あらためて感得させられる傑作だ。
――奥泉光さん
この物語が世に出る瞬間に立ち会えたことに、心から感謝している。
――金原ひとみさん
ただ素晴らしいものを読ませてもらったとだけ言いたい傑作である。
――川上未映子さん
(選評より)
話題沸騰!
「言葉にならない」が言葉になっていた。掴んだ心を引き伸ばして固結びされたみたい。今もまだ、ずっとほどけない。
――尾崎世界観さん(ミュージシャン)
いまだに「カケイさん」の余韻が、胸の奥をふわふわと漂っています。生きることの全てが凝縮されている、とてもいい物語でした。
――小川糸さん(作家)
カケイさんの心の中の饒舌に引き込まれているうちに、小説としてのおもしろさと力強さに頭をはたかれました。読み終わった時には、自分自身が癒されて、私ももっと小説を書きたい、頑張りたい、と強く思いました。
――原田ひ香さん(作家)
カケイさんの中に亡き祖母を見た。祖母もきっと見ただろう花々に私も出逢えると信じて、これからも生きてゆこう。
――町田そのこさん(作家)
平凡な人間なんているはずがない。鉄槌で殴られるような読後感。傑作必読。
――大盛堂書店・山本亮さん
カケイさんの語りによる、圧倒的な物語の牽引力が、最初の一行から最後まで全く緩まないのだ。この強力な引力こそがこの作品の大きな魅力である。
――成田本店みなと高台店・櫻井美怜さん
(文芸ポータルサイト「小説丸」より)
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