佐川光晴さんの新連載、椎名誠さんの新作、チェ・ウニョンさんの翻訳小説等、心のひだを震わす作品がズラリ勢ぞろい。米田夕歌里さんの「うちの庭」は、ケアの問題にも触れる意欲作です!

【新連載】
佐川光晴「あけくれ」
尾道で暮らす真記は、長期休暇に伯父夫婦の「三原のうち」へ泊まりに行くようになる。子供のいない夫婦から存分にかわいがられるも、「養女になるとしたら、何歳でなのだろう」と心配事は絶えない。瀬戸内から始まる、少女の瑞々しい旅立ちと自立を描く物語。

【小説】
米田夕歌里「うちの庭」
機嫌を損ね、ひっくり返って泣く息子の蓮に、母親である「わたし」は疲れ果てている。誰しもが通過する子育ての困難は、それが成長の過程であり、その先に自立というゴールがあると思えば踏ん張れるもの……しかし、そう思えない事情が蓮にはあった――。

【小説】
椎名誠「卍橋商店街の歩きかた」
極度の肥満による長く厳しい入院生活をへて、退院した「わたし」は、立体交差道路沿いに店が連なる「卍橋商店街」へ散歩に出かける。成長する「増し増し坂」をのぼり、馴染みの商店を懐かしく巡りながら、「卍橋」のてっぺんを目指す。

【翻訳小説】
チェ・ウニョン「ほんのかすかな光でも」
銀行を辞めたヒウォンは、二十六歳で大学三年生に学士編入し、受講する英文学の非常勤講師の「彼女」と親しくなる。しかし、「彼女」はヒウォンの進路希望が「彼女」と同じ学問の道であることを知ると、思わぬ反応を見せて……。訳・解説は牧野美加。

【対談】
小川洋子×福井晶一「「舞台」という奇跡を描いて」
小川氏の最新短編集『掌に眠る舞台』には、雇い主のために劇場で暮らす女性や、『レ・ミゼラブル』の全公演に通う女性など「舞台」にまつわる8編の物語が収められている。観客と演者、観る・観られる――「舞台」でしか成立し得ない特別な関係について語り合う。

【インタビュー】
古谷田奈月 最新長編『フィールダー』刊行記念
執筆のきっかけは、ペットの飼育をめぐる疑問だったという。〈なぜ人は動物を飼ってもいいと思っているのか?〉。その違和感と矛盾は、次第に現代社会全体を覆うものへとなってゆき……。

【評論】
倉本さおり「持ち堪えてしまう者の祈り――高瀬隼子論」
『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞を受賞した高瀬氏。デビュー作『犬のかたちをしているもの』以降、高瀬作品に織り込まれてきた社会の歪みの在りようと、行き場のない祈りを掬い取り、論じる。

【すばるクリティーク】
荒川求実「主体の鍛錬――小林正樹論」
国際的に高い評価を得ながら、国内においてはその功績が忘却されつつある映画監督・小林正樹。代表作『人間の條件』を中心に作品分析を重ね、小林の主張した「反戦」の、そして小林作品に宿る「主体性」の内実を探る。

【第46回すばる文学賞二次予選通過作発表】
第47回すばる文学賞の募集要項はhttps://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/をご覧下さい。ご応募をお待ちしております。

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