このところ、有り難いことにインタビューや対談をさせていただくことが増えているのだが、どこに行っても「不安」という言葉を聞くことが多い。

「原田さん、読者の皆さんは将来の不安を抱えていらっしゃるのですが、どう思いますか?」

「老後の不安をどう解消したらいいのでしょうか」

「将来の不安」「老後の不安」「漠然とした不安」……名前は変われど、皆、自分の行く先になんらかの不安を抱えている。もちろん、私自身もそうだし、偉そうに指南なんてできないのだが、それならぜひおすすめしたいのが、「失職女子。」だ。

 普通、いや、普通以上に高度な教育を受けた女性が職場内のセクハラや家庭環境などの理由で、うつ病となり職を失い、生活保護を受けることになっていく様子が克明に描かれているノン・フィクションである。非常に正確な記録が残っていることがすばらしい。このようなわかりやすくきちんとした文章を書ける方が生活保護を受けることになるということに、人生は何が起こるかわからない恐怖も感じる。

 

『失職女子。私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』
大和彩/著(WAVE出版)

 けれど、最後まで読めば、きっとどこか勇気ももらえるはずだ。本当に必要ならば、日本には「生活保護」という最後の砦があり、老いも若きもそれを受ける権利があり、方法があるということを知った時、私は少し安心できた。

 さて、生活保護を受けるところまではいかないだろうけど、なんとなく老後に不安がある、という方には「71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活」がおすすめだ。

 自分が本当のところ、月に何万円で生活できるのかということを知ることは将来の不安の解消につながる、と私は思う。家さえあれば(そして、実は関東近郊でも、驚くほど安く買える家は結構あるのだ)、月五万円で生活できる、ということになれば将来はとても明るくなり、自分への自信にもつながるはずだ。

 最近、若者を中心にFIRE(経済的自立と早期退職)という生き方が流行っているが、もしも、年金内で生活ができることがわかれば、それは立派な「FI」(経済的自立)ではないか、と思う。

 老後が不安という人、一度でいいから、「老後、自分はいったい、どんな一日を過ごしたいのか」から始め、「どんな一週間を過ごしたいのか」「どんな一ヶ月を過ごしたいのか」そして、それには「いくらかかるのか」ということを考え、整理してみてほしい。 

 そして、その生活に、今あるお金や年金では足りないのなら、それをどうするのか、どうやって増やすのか、仕事をするのか、生活の方をダウンサイズできるのか、考えたり、試したりしてみてほしい。また実際、月五万円で過ごしてみるのも有効だろう。

 あのマイケル・ジャクソンでも後年は借金まみれだった。どんな富豪でも欲望のままにお金を使えば足りなくなる。皆、どこかで制限しなければならないのだ。であれば、足るを知り、不安がなく、心地よい生活を送った方が、ずっと楽しい人生ではないだろうか。

『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』
紫苑/著(大和書房)