内容紹介
失われた体力を求めて――
大病と化学療法でよろよろの身体、それでも人生は続いていく。
乳がんの治療ですっかり体力を失ったキミコさん。
ラジオ体操でさえフラフラの状態だが、体育会系編集者の叱咤激励によっていやいや運動を始めることに。まずは1日1000歩から。
散歩、縄跳び、そして最難関・山登り(標高531メートル)へ…!
思わず元気をもらえる、北海道在住・ぐうたらエッセイストの、猫と散歩と養生の日々。
プロフィール
-
北大路 公子 (きたおおじ・きみこ)
北海道札幌市生まれ。2005年『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』でデビュー。各紙誌でエッセイや書評を執筆。
エッセイに『生きていてもいいかしら日記』『苦手図鑑』『石の裏にも三年 キミコのダンゴ虫的日常』『晴れても雪でも キミコのダンゴ虫的日常』『ロスねこ日記』『いやよいやよも旅のうち』『お墓、どうしてます?』、小説に『ハッピーライフ』など著書多数。
インタビュー
書評
応援したくなる心と体の回復記録
東えりか
北大路公子さんといえば、北海道在住の元気なエッセイストという印象が強い。昼酒とネコを愛し、流れるままに人生を楽しむ姿は多くの女性を惹きつけた。
それなのに今回のタイトルは『キミコのよろよろ養生日記』。養生って何ごと?
冒頭は極寒の札幌。夏に乳がんで手術して抗がん剤治療のあと自宅療養中のようだ。治療の第一歩は成功したことを意味している。
巷間知られているように、抗がん剤治療は副作用が強い。強い薬のため健康な細胞までダメージを受けて免疫力が弱くなり、頭髪が抜けたり体力が極端に失われたりする。
そんな状態の北大路さんには大雪の雪かきはおろか、ゴミ出しのあと、玄関までの二十段の階段がチョモランマ級の登山になる。
いまや日本国民の二人に一人はがんになる時代。術後管理や生活面で通常にもどすための注意点はエビデンスがあるものとして患者に伝えられている。
失くした体力を戻すべく、二〇二二年二月から二〇二三年一一月まで行った北大路さんの苦闘はなみなみならぬものだった。
チョモランマ登山に絶望したあと、まずはラジオ体操を試してみると、これが想像を絶して倒れるほどのキツさだった。ならばもっと軽めにと散歩に挑戦。伊能忠敬に導かれるプログラムの万歩計によって、意外にも楽しみを見出した北大路さん。わかるなあ、散歩って長く歩いていると脳内麻薬で記憶が走馬灯のように浮いては消え、いつの間にか相当の距離を歩いてしまうのは私も経験がある。
体育会系連載担当者の指導で縄跳び、フィットネスバイク、スポーツジムとハードルは上がり、最初は弱音を吐いていても、いつの間にか自分のものにしていく生命力の強さに感動する。そして最後の難関、山登り。回復していく様子に思わず私も「よっしゃー」と一緒に拳を突き上げる。体力は大丈夫。あとは無事に寛解されることを心から祈っている。
「青春と読書」2025年2月号転載
新着コンテンツ
-
連載2026年07月28日
連載2026年07月28日【会いたい人に会いに行く】 第16回 岩井圭也さん(作家)→山崎エマさん(ドキュメンタリー監督)
最新作でドキュメンタリーの世界を通して「真実とは何か」をサスペンスフルに描いた岩井さんが、ドキュメンタリー監督の山崎エマさんに会いに行く。
-
インタビュー・対談2026年07月27日
インタビュー・対談2026年07月27日ピンク地底人3号×本谷有希子「二十年間演劇で培ってきた「身体を描き込む技術」を注ぎ込みました」
小説第二作を上梓したピンク地底人3号さんと、劇作家、小説家として活躍する本谷有希子さんに、小説と演劇について語っていただきました。
-
インタビュー・対談2026年07月24日
インタビュー・対談2026年07月24日『汽笛、聞こえる』刊行記念インタビュー 佐藤雫「「保る」とは何か」
歴史恋愛小説から新たな一歩を踏み出した佐藤さんに、本作に込めた思いと、今の社会へ向けた問いについて伺いました。
-
インタビュー・対談2026年07月24日
インタビュー・対談2026年07月24日井上荒野「人はみな、物語になりたがる」
数多の作家に書かれた「推し活」も、井上さんの手にかかればまったく新しい側面が見えてくる。本作に立てた問い、たどり着いた答えとは。
-
新刊案内2026年07月24日
新刊案内2026年07月24日こんなにも多くの人が、マリアナ
マリア・ジュディッテ・デ・カルヴァーリョ
ポルトガルの忘れられた文豪が描く、人間の孤独。傑作リバイバル文芸作品。
-
インタビュー・対談2026年07月20日
インタビュー・対談2026年07月20日『宮崎駿の詩学』刊行記念インタビュー 赤坂憲雄「宮崎駿の中心にある、世界を考えるための「問い」」
宮崎駿の作品たちは今、私たちにいったい何を示してくれるのか。赤坂さんがこの本に込めた思いを伺った。
