内容紹介
自分の居場所はどこにもない。でもひとりでは生きていけない。
無意識に大量の空気を呑み込むためおならが頻繁に出てしまう呑気症(どんきしょう)に悩む男子高生の薫(かおる)。
いつおならが出てしまうかと怯えるだけでなく、教師の言うことに従って集団行動を強いられる高校生活にも苦痛を覚えている。
二年に上がってまもなく、ついに学校に行けなくなり、薫は夏のあいだ、大叔父・兼定(かねさだ)のもとで過ごすことに。
兼定は親族の中でも異色の存在で、シベリアからの復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。
薫は店を手伝ううちに、一日一日を生きていくための何かを摑みはじめる――。
思春期のままならない心と体を鮮やかに描きだす、『光の犬』から3年ぶりの新作にして、珠玉の青春小説。
プロフィール
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松家 仁之 (まついえ・まさし)
1958年、東京生まれ。編集者を経て、2012年に発表した長編小説『火山のふもとで』で第64回読売文学賞を受賞。2018年『光の犬』で第68回芸術選奨文部科学大臣賞、第6回河合隼雄物語賞を受賞。その他の小説作品に『沈むフランシス』『優雅なのかどうか、わからない』。共著に『新しい須賀敦子』。
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