内容紹介
第49回すばる文学賞受賞作。異形の青春小説誕生!
「本当に久しぶりに、ただただ面白い小説を読んだ」金原ひとみ氏
「もっとも読む快楽を感じた」岸本佐知子氏
(選評より)
上司のパワハラで退職し、アパートに引きこもっていた野中。
ある時、大学時代の友人・忍から「毎月10万渡すからスト6の対戦をしてくれ」と謎の提案をされる。
以来、月1のメンクリ通いと週4の忍とのオンライン対戦、そして、毎日最寄りの自販機でマウンテンデューを買ってはふらふら散歩する日々を過ごしていた。
九州の実家では父親が病気で死にかけていて、母親からは早く帰るよう懇願されている。
“都落ち”が近づくある日、いつもの自販機に貼られた、意味不明な文章が印字されたテープと出会う。
[じゃあ一生オマトゥマヘーオマヘマンヘーっつてろよ]
野中は、自分の粉瘤の血が飛び散ってしまったそれを【呪物】としてフリマアプリに5000円で出品。
すぐに落札されたことをきっかけに、野中は更なる混沌に巻き込まれていく――。
だるくて切実、くだらないのに沁みてくる、令和最強の“底辺”青春小説。
プロフィール
-
更地 郊 (さらち・こう)
2025年『粉瘤息子都落ち択』で第49回すばる文学賞を受賞。
すばる文学賞受賞記念エッセイ
灰汁
更地 郊
話作りはカレーと同じ、どんな具材を入れようが肝心のルーでまとめれば良し、と中年漫画家とその息子の日常を描いた室井大資氏の傑作漫画『秋津』で読んだ。じゃあ拙作『粉瘤息子都落ち択』のルーは何だったのか。鍋に投下したっけか。
昨夏、公募に落選してからはSFLかMリーグの放送をPC画面分割で視聴、残り半分で雀魂の対局に明け暮れた。十一月、四着が重なり、段位も雀豪から雀傑に降級。麻雀の不条理からの逃避で再び文章と向き合うことに。ポメラを久々に開くも、だってよ……シャンクス……弾が―腕も―状態。一旦、直近で関心あるものを羅列。麻雀小説、牌譜作れない、無理。SF6、粉瘤、ポイ活、金欠、ヴァンダリズム……採択。こんなノリで具材を鍋にぶっ込み、前作の逆張りを基調にして書くことにした。で、一月の終わりには悪臭を帯びた湯気やら、ケミカルな灰汁が鍋内で躍っていた。味見はしなかった、怖くて。
応募期限まで三週間をきった頃、ポメラが逝った。充電端子が飲み水に浸っていたらしく、本体へ挿した途端に画面がブラックアウト、最後に白いグリッチが走り、臨終。過失致死。幸いにもデータはSDカードに保存しており、PCに移せば作業できたが、この時期に愛機の死とは滅入る。大体、終盤の構想はおろか作品名も未定という体たらく、間に合わん。気乗りしないが応募サイトから応募用テンプレファイルを取得、文を貼り付けた。─美しい。縦書き明朝体だと小説のよう。ポメラでは横書きゴシック体表示だったから尚更。なのでこれは小説なのだと思い込むことにした。もはやルッキズムだが、そのお陰で残りの文章が出来た。
そして十一月の麻雀の負け分を返済する豪運の自摸により、変な題名で鍋から皿に注がれ、人前に出された。商品化もするらしい……。で、ルーは何だった? あの灰汁が奇跡的にカレー風味に? よく分からないですが、まあ灰汁って健康に良い成分も入っているらしいので、抵抗なければ是非啜ってください。
「青春と読書」2026年1月号転載
新着コンテンツ
-
インタビュー・対談2026年02月05日
インタビュー・対談2026年02月05日北方謙三「歴史に仮託して現代人の心情や行動原理を書く。それが私の歴史小説であり歴史小説観です」
40年来のファンから、最近読み始めたという方まで、幅広い読者が集つどった熱気あふれるイベントの一部をお届けします。
-
新刊案内2026年02月05日
新刊案内2026年02月05日森羅記 二 揺籃の塵
北方謙三
クビライ、ついに大モンゴル国の帝に。さらなる脅威に鎌倉幕府は、いかに立ち向かうのか……。蒙古襲来を描いた歴史巨編、堂々第二巻!!
-
新刊案内2026年02月05日
新刊案内2026年02月05日超巨大歩行機ゴリアテ
椎名誠
椎名誠が独自の言語感覚で紡ぐ、ファン待望のSF短編集!
-
新刊案内2026年02月05日
新刊案内2026年02月05日粉瘤息子都落ち択
更地郊
第49回すばる文学賞受賞作。パワハラで退職した主人公の、だるくて切実、くだらないのに沁みてくる、令和最強の“底辺”青春小説。
-
スキマブックス2026年01月26日
スキマブックス2026年01月26日ポルトガル盲腸日記
浅井晶子
『ポルトガル限界集落日記』刊行記念特別エッセイをお届けします。異国の山奥で急性虫垂炎を患った浅井さん。はじめての救急車体験をしますが……!?
-
インタビュー・対談2026年01月26日
インタビュー・対談2026年01月26日「外国で暮らすためには、自分のもともと大切にしていたものをいかに守るかが大事」
距離・文化・言語それぞれの面で母国から離れて暮らすおふたりに、異文化交流について語り合っていただきました。