RENZABURO

突撃インタビュー いまどき クリエイターズ

17歳の、飾らないキモチ
作家・モデル 華恵さん

10代の頃からモデル・女優として活躍し、小学生にしてエッセイ集を出版。
今回のゲストは、現役高校生にして、雑誌連載やレギュラー番組を持つ華恵さん。
この経歴を見ると、エッセイもさぞや華々しい内容なのかと思うけれど……?
いえいえ、とんでもございません。
高校生ならではの瑞々しい感性と素直な気持ちに満ちた、心に染み入る内容なのです。
老若男女の胸をキュンとさせるエッセイスト・華恵さんに、日常のこと、執筆のこと、率直にお話しいただきました!

高校は、<超>個性的

--『小学生日記』でデビューしてから6年。小学生だった華恵さんも、もう高校2年生なのですね。『キモチのかけら』や「野性時代」での連載(『寄りみちこみち』として角川書店より刊行)では、農業実習など高校での出来事についてもたびたび触れられています。聞くところによると、かなり個性的で自由な学校だとか?

華恵(はなえ)
1991年アメリカ生まれ。
10歳からファッション誌でモデルとして活動。2003年、短編映画「ハナとオジサン」で女優デビュー。
02年、全国小・中学校作文コンクール文部科学大臣賞を受賞。
著作に『小学生日記』、『本を読むわたし』、『ひとりの時間』、『キモチのかけら』などがある。08年秋に『寄りみちこみち』を刊行した。
現在、「webちくま」、「朝日小学生新聞」、雑誌「山と渓谷」などにエッセイを連載中。

 

華恵: 校則はゆるいと思います。制服はありますが、髪を染めてもいいし、化粧もピアスもOKです。

--すると、生徒さんは皆けっこう派手なのでしょうか。

華恵: それが、そうでもないんです。入学してはじめの1週間とかは、みんな自由が嬉しくて、化粧してみたり休み時間となればお菓子を食べてみたりしていました。でも、自由だよと言われると、だんだん飽きてくるんですよね。それぞれ個性も出てくるし、化粧にしても、「肌荒れるんだったら、やらないほうがいいよね」という感じになってきて、今は全体に落ち着いています。
女子高だからかもしれませんが、普段は皆、おじさんみたいというか……学校に来たらスウェットに着替えていたりして、家に居るみたいな環境です(笑)。

--その居心地の良さが、華恵さんの個性的なお友達を育んでいるのですね。華恵さんのエッセイを読んでいても、高校生になってからのものはお友達からたくさん刺激をうけつつも、とても伸び伸びと書かれている印象を受けます。

華恵: 学校は、オタクの集合体みたいなんですよ(笑)。ビジュアル系バンドが好きな子はそれを極めているし、ジャニヲタもいるし、漫画、本、勉強、それぞれに極めていますね。生物の本を買ってきて、休み時間に「かわいい~!」と言って眺めている子もいたりして、面白いです。私は中国武術の部活に入っていますが、最近は周りから色々と刺激をうけて、ビジュアル系にも足を突っ込みはじめました。

--中国武術部とは、初耳です! どんな活動をしているのですか?

華恵: 基本は、空手のように型を見せるんです。素手はもちろん、棍棒、剣、長い鎖などの武器を使うこともあります。私も鎖をやろうと思っていたんですが、コーチに「華恵さんは素手でいいよ。武器を持つと、たぶん武器を壊しちゃうから」と言われて素手になりました(笑)。

小学生日記

--鎖を振り回す女子高生……かなり個性的ですよね(笑)。それを皆が自然に受け入れてくれる環境というのは、すごく素敵です。
華恵さんのエッセイには、お友達と出かけた電車の中でのひとコマや、試験休みの午後の出来事など、日常のささやかなシーンが鮮やかに描かれています。読むと、高校時代のキラキラした思い出が蘇ってきて、キュンとしてしまいます。華恵さんが今、素敵な経験をされていて、それが自分の思い出の一番キラキラしたところを呼び起こしてくれているような気がします。

華恵: 「こういう感覚って、そういえば昔はあったなぁ」といった読者からの感想をいただくことは、結構あります。私の親の世代の方からの感想に多いのですが、すごく嬉しいです。

 

興味の幅は拡がるばかり

--学校、部活、執筆などのお仕事に加えて、登山もされるのですね。「山と渓谷」などのエッセイによると、スノーシューを履いたりとかなり本格的なようですが、登山はいつから?

華恵: わりと最近です。カメラマンのホンマタカシさんに誘われたのがきっかけでした。最初はクライミングと聞いて大丈夫かなぁと思いましたが、知っている人に色々と教えてもらって、連れて行ってもらえたので安心して始められました。クライミングは十数回行ったと思いますが、このごろは学校や勉強も忙しくてめっきり行けなくなってしまって……。最近は、東京近郊の低山に行くようになりました。これまで人に連れて行ってもらうことばかりだったので、自分の力で行けるようになろうと思って、挑戦しています。

キモチのかけら

--4作目のエッセイ『キモチのかけら』は、「ッダーン!」という衝撃的な滑落の場面から始まって、驚きました。日和田山に登ったときのお話ですよね。中国武術にしても登山にしても、華恵さんが新しい経験をされるたび、文章の切り口も進化していて、さすがだなぁと思います。 それにしても、本当にフットワークが軽いですよね。

華恵: 人との出会いで、教えてもらって始めることが多いんです。でも、体験ばかりで、ちゃんと練習して上達するということができていなくて……。

--まだ17歳ですよね。そのお歳で色々と極めていたら、この歳になってしまったお姉さんとしては、立つ瀬がありませんよ(笑)。

華恵: とはいえ、もう受験期に入るし、今は拡がっていく興味の方向を少しずつ絞っているところです。今まで出会ってきたことを、自分の独力でできるようにしたいんです。あと1年はどうしても勉強中心にはなりますが、色んなことを同時にやるという姿勢は今後も続くと思います。あぁこれから逃げたいなぁ、と思って別のことをやる、そうやって回っていくやり方が、私には合っているのかな。

 

キッチンでの取捨選択

--以前、華恵さんは「感情が昂ったときに何か書ける気がする」とお話ししていました。でも、エッセイを読んでいると、文章が落ち着いているというか、とてもしっかりと考えて選び抜いた言葉で書かれているという印象を受けます。そのあたり、どのような執筆のプロセスなのでしょうか。

華恵: まず、最初に始めから終わりまで書いてしまわないとダメなんです。最後まで行き着かないと直したりすることもできないので、まずは一気に書いてしまいます。そのときは、感情が昂っていないとダメです。そうでないと、途中で挫折しちゃう(笑)。
一度最後までいったら、その後3回、4回は直します。直すときは、最初に言葉をたくさん出すときよりもゆっくり楽しくできるんです。

--日々、気になったことを書き留めたりもしますか?

華恵: できるだけ書き留めるようにはしています。「ほぼ日」の手帳を使っているので、1日1ページのスペースに書いたりしています。

--華恵さんのエッセイは、『小学生日記』から最新刊『寄りみちこみち』まで、日常のことを書いているのに「わたしわたし」となっていないところがいいですよね。個人的な経験を書いているのに、自己主張が鼻に付く感じはいっさい無くて、すいすい惹きこまれてしまいます。

華恵: 自分の書いたものを後で読み返すと、たいてい「わたしわたし」になっているので、それを調整する作業を大切にしています。「あぁ、満足した!」というものを書き上げても、よく書けたと思うものに限って「わたしわたし」になっているんです。

--それを小学生のころから続けてこられたということが、すごいですね。

華恵: 昔から、よく母が夕飯のしたくをしているときに、自分が書こうと思っていることを話してみるんです。そうすると、わりと正直な感想が返ってくる。どうでもいい内容だと、聞いているのかいないのかわからない反応です。でも、「そういうこと、あるね」とか「それはあんただけじゃなくて、他の人にも言えるかもしれないよ」とか言われることもあります。その反応で、「書くぞ」と決めることもあります。

--それを、日々キッチンに並んでやっているわけですね。素敵な光景です(笑)。そういうふうに一度読み手のフィルターを通してから書くことで、内容にも磨きがかかっているのですね。

華恵: 学校や部活のことは特にそうですね。何か問題が起こって、それを母に話していると「で、けっきょくどうなったわけ~?」という反応が返ってきたりして、「そうか、長々と話したり考えたりしているけど、たいしたことじゃないなぁ」と気づくんです。学校でのことは内輪で盛り上がりがちだったりするので、私が読者ならそういうことは読みたくないなぁ、と気づきますね。

--個人的なことと読み手が読みたいこととのバランスのとり方が、とても上手ですよね。最近のエッセイでは、「キレる私」やからだのニオイで悩んだことなどを正直に書いていたりして、読むたびに「いいんだよ」と言われている気がします。飾らなくてもいいんだよと。

寄りみちこみち

華恵: ニオイのこととか、お風呂が嫌いなこととか、とても恥ずかしくて言えないと思っていたんです。でも、お風呂については谷川俊太郎さんも嫌いだと話していて、安心してふっきれました。
高校に入って、友達の間でも恥ずかしいことについて話せるようになったというのも大きいですね。中学は共学だったので、男の子の視線を気にしてしまう部分もあったけれど、今は女子高ですし。でもそれ以上に、周りの子たちが個性的で、小さな違いでは恥ずかしいと感じなくなったことが大きいです。そんなこと、気にしないという雰囲気があります。

--恥ずかしいことに限らず、今でもまだ書けないと思うことはありますか?

華恵: ありますねぇ。恥ずかしくて、というものは減りましたが、今はまだもやもやっとしていて書けないものはあります。もう少し時間が経つとすっきりとまとめて考えられそうだな、という内容は、時を待っていますね。
でも、そのもやもやした気持ちが自分の中で消化されて過ぎ去ってしまう前に書かないとダメです。「書くほどではないや」と思ってしまう前のぎりぎりのタイミングを、いつも自分の中で計っています。

--今後、小説を書かれたりする予定は……?

華恵: 書きたいですが、まだできないですね。ただ、お話を作ることの第一歩として、絵本を作ろうという話をいただいていて、考えているところです。現実の誰かのことではなくて、内容だけを書きたいと思うテーマがたくさんあるんです。それはエッセイではできないことなので、お話を作るほうで出していきたいと思っています。

 

学校生活に、受験勉強に、趣味に、仕事に大忙し。
その全てを「書くこと」の糧にしてしまう華恵さん。
そして、その文章は書くたびにより伸び伸びと、取捨選択を経て磨かれていく。
一般に、若くしてのデビューには賛否両論あるが、
少なくとも華恵さんにとって、書き続けていることはプラスに働いている。
成長していく一瞬一瞬をつづり、これからも私たちに瑞々しい感動を与えてほしい。

取材うらばなし

長身で、落ち着きのある大人の表情。澄んだアルトの声できちんとした受け答えする華恵さんは、とても17歳とは思えませんでした。撮影では、キュートな姿にスタッフ一同「キュン死」寸前。けれど、恋愛についてお聞きすると「無いですねー」と即答! お友達とワイワイやっているのが楽しいお年頃のようで、「カラオケで合コンとかしないの?」という(若干時代遅れな)なっしーの質問にも「カラオケでは男の子にはお聞かせできないような声を出したりするので、居られても逆に困ります」とのこと。「彼氏とデートに行く子がいたら、ガンバッテー!!と皆そろって手を振って送りだします(笑)」なんて、男子禁制の楽しいノリを満喫しているようです。

 

マイブーム紹介 旬な人の、旬なもの。

刑務作業製品です。CAPICというお店で買えます。普通よりも製品の検査が厳しくて、安いのに品物がすごくいいんです! 母に教えてもらいました。これは、おにぎりパックと箸箱。牛乳パックの底をぎゅっと押し付けて作ってあって、可愛いし、そうそう壊れません。これにおにぎりを2コ入れてバナナをつけて、毎日学校に持って行ってます。

 

イラスト ハヤシフミカ  写真 高橋依里

 
 

Copyright (C) SHUEISHA Inc. All rights reserved.