『キックス』刊行記念対談 天沢時生×小川 哲「ダークサイドの滋賀を突き抜ける」
スニーカーの贋作で滋賀を、世界を手に入れる――。
小説すばる連載作の天沢時生氏『キックス』は、破天荒に破天荒を重ねたギャングスタ小説だ。
同じくSF出身の大先輩である小川哲氏を迎え、天沢氏を作家として世に送り出した大森望氏に進行していただきながら、今作の魅力について深堀りしていただいた。
構成/大森 望 撮影/大西二士男
――お二人は経歴に意外と共通点が多いですね。ともにSF系の新人賞の出身で、最初の単行本を早川書房から出したあと、SFじゃない長編を『小説すばる』に連載して単行本化。
小川 なるほど。
――年齢的にもほぼ同世代。作家歴では小川さんがだいぶ先輩ですが。
天沢 僕がまだゲンロンSF創作講座に通ってデビューを目指していた頃、小川さんが『ゲームの王国』を出されて。そのあとそれが日本SF大賞と山本周五郎賞を受賞して、ゲンロンカフェで受賞記念トークイベントがあって。たしかそのときが初対面ですね。
小川 天沢さんもそのころ「ラゴス生体都市」でゲンロンSF新人賞を受賞されて。その前後、ゲンロンSF創作講座の打ち上げとかでちょくちょくお会いしてましたね。
ギャングスタ遠野物語
――さて、本題の『キックス』ですが、ちょうど単行本の出るタイミングで、滋賀小説ブームの波が。
小川 宮島(未奈)さんの「成瀬」シリーズがめっちゃ売れてる。「成瀬」とは毛色が全然違いますけど。
――『成瀬』が陽の当たる滋賀なら、『キックス』は滋賀のダークサイド。
小川 僕はこれ、「ギャングスタ遠野物語」だと思った。天沢さんの筆がいちばん乗ってるのが、ギャングスタ伝説なんですよ。語り伝えられている伝説と、伝説が生じる瞬間みたいなものをとにかくたくさん集めて、それをキックス(スニーカー)にまつわるストーリーで包んでいる。そのギャングスタ伝説と、滋賀の飛行機にまつわる民話的な伝説が最後に合流する構成で、『遠野物語』っぽさがある。ギャングやヤンキーの間で語られる伝説が作品として実体化したものであると同時に、小説の中でもまた伝説が出てくるという入り組んだ構造。そこがいちばん面白いし、かっこいいところだった。
天沢 ありがとうございます。
小川 そこは書いてて楽しかったですか?
天沢 そうですね。小説を書きはじめた頃、大塚英志さんの創作論をもとにして書くことが多くて、もともと民俗学がベースにある。『キックス』のときは全然意識しなかったけど、小川さんがおっしゃってることはたぶんそのとおりなんだろうと思います。
小川 前半はギャングのエピソードが雪崩のようにいっぱい出てきて、登場人物たちの過去を際立たせる。温哉だったり行哉だったり、いろんなチームのリーダーだったりの話がどんどん出てくる中に、翦風号っていう、一九一四年に滋賀の空を初めて飛んだ民間飛行機の話がぽっと入ってくる。その滋賀のローカルな伝説とギャングたちの伝説が靴を媒介に合流していくっていうのが凄く面白いなと思いましたね。
天沢 書き出す前に、テーマとは別に、「土地の神話」をやりたいと思っていて。自分から思い立ったというより、たまたまその頃、担当編集者と、SF創作講座の友人と、それと小川さんから、まったく別々に『シンセミア』(阿部和重)を薦められたんです(笑)。スロットで三つ図柄が揃ったから、これはもうやるしかないと。だから、ストーリーの骨子が固まる前にこういうトーンでやろうというのは決まってましたね。
小川 実際、『シンセミア』読んでどうでした?
天沢 こんなにひどいこと書いていいんだと(笑)。
小川 確かにね。だいぶひどいこと書いてる。
天沢 『地図と拳』もそうですけど、ひとつの街とか空間をドカッとまるごと立ち上げられるっていうのはロマンですよね。小説の醍醐味。僕はまだそこには至れていないけれど、そのほんの小さな断片でもやれたらって思って書いた感じです。
小川 実はその、土地の歴史を掘ることが、ギャングスタ伝説みたいなものと相性がよかったというのが面白い。翦風号のエピソード自体は実話の要素もあって、地元のワルの話とは無関係なんだけど、でも、「もし翦風号が人々の心の中に伝説みたいなものとして残っていたら」っていう構造にしたとたん、ヤンキーの間で語られる伝説と、同じ民話として重なり合っていく。
天沢 ありがとうございます。
――翦風号はどこから出てきたの?
天沢 まだ企画が固まってない段階で、滋賀のローカルな資料をたくさん集めてたんです。『キックス』はそれとは関係なく連載が始まったんですが、途中ヤンキーのことばかり書いてるから、ちょっと味変した方がいいかも(笑)と、資料を引っ張り出してみた。そしたら、戦時中、滋賀の国民学校で木製の模造飛行機を作ってたという話が出てきて、これはあまりにもこの小説に合致するなと思って。どうくっつくかわからないけど、とりあえずここがくっついてるからなんとかなるだろうと。
――ちゃんとくっついてる?
小川 かなり剛腕ではあるけれど、靴というもので一応くっつけたなと。小説としては、あのおかげで滋賀を舞台にする意味が一気にグッと広がった。あそこまでは、別に滋賀である必要はないじゃないですか。翦風号が出てきたことで、滋賀に根ざした小説になった。
――フランク・チャンピオンが操縦した第二翦風号って、僕の郷里の高知で航空ショーやってる最中に墜落したんだけど、うちの祖母がそれを見ていたそうで、子供のころ母親からその話を聞かされたのを、『キックス』読んで五十数年ぶりに思い出した。高知でも地元の伝説になってる(笑)。
天沢 翦風号があった民間飛行場に誘致された陸軍航空隊の八日市飛行場って、今はもう跡形もないけど、僕の家のすごく近くなんですよ。進駐軍が来たとき、飛行機は解体されて民間に払い下げられた。うちの近所は農家が多くて、農具をしまう倉庫にめちゃめちゃカジュアルに戦闘機のタイヤとかが置いてある。うちの納屋にも大八車に姿を変えた戦闘機のタイヤがある(笑)。ここらを掘ると、自分の曾祖父とか血縁の話としてこの話を引き受けられるんじゃないかって、ちょっと考えましたね。
小川 その飛行機の歴史を入れたことで、作中でも強烈なインパクトを残す阿部新市というヤバいキャラクターも生まれたわけで。

贋作の理由
小川 元々はスニーカーの偽物を作る話を書こうっていうのが大前提だったんですか。
天沢 そうですね。当時、第二次スニーカー・ブームみたいな時期で、出るレアスニーカーが軒並みすごく高騰していた。
小川 まだカニエ・ウェストがまともというか、今ほどヤバくなかった頃。「イェ」に改名した頃か。
天沢 そうですね。
――アディダスとコラボして……。
小川 持ってましたよ。カニエがユダヤ人差別始めて履けなくなったけど。『キックス』にもカニエ(っぽい人物)が出てくるよね。あそこ最高だったね。カニエ(っぽい人物)がイナズマロック フェスにやってくるっていう。来るわけないんだけど(笑)。贋作を作るというのはどこから?
天沢 二つあるんですけど、ひとつは、当時のスニーカー・ブームって、有名なファッションデザイナーが歴史的なモデルをいちど完全に解体して再構築するみたいな作り方をして、それをコラボと言って売り出すことが多かった。ナイキだったらここにスウッシュ(ロゴマーク)入ってますけど、それをレザーで別に作って手作業で縫い付けるとか。
小川 リメイクするみたいな。
天沢 そう、リメイク感があるんですよね。それって公式が新しく始めたように見えるけど、スニーカーカスタマイザーとかスニーカーカスタムショップがすでに同じようにして作ってて、以前から非合法で出回っていた。でも、そっちは見つかると捕まる。公式の方も同じような二次創作をやってるのにそっちは捕まらない。それはなぜか? みたいなところに切り込むと面白いかなと。もうひとつは、僕の出自がSFだってことに関係するんですけど、この企画を始めるとき、最初に担当編集者から、「非現実的なものとか超現実的なものは完全になくして書いてください」って言われたんですよ。
小川 リアリズムで書けと。
天沢 なんか羽をもがれたも同然で。いくら考えても全然話が出てこない(笑)。贋作ってのは嘘なので、贋作をテーマにすることで、嘘をつくためのパスポートを手に入れた感じです。
小川 結果、書けたんですね。
天沢 今回は、ここに書かれてるこれこれの話が贋作なんだみたいな立て付けで、嘘を書いてもよかったから書けたんだけど、それを一回やってしまったので、この先どうしようかと。
小川 でもその言い訳って自分に対するものでしかないから、今回贋作として書いたことを次は真顔で書けばいいだけの話で。贋作っていうパスポートを持ったからのびのびやれたけど、実はそのパスポートって自分のためのものでしかない。読者は小説なんて嘘だと思って読んでるんだから、やっていいんですよ。もっとやってもいい。
天沢 そうか。もっとやろう(笑)。
――小川さんは『地図と拳』のとき、同じ担当者に「何かSF要素を入れてください」って言われたのに。
小川 そうそう(笑)。
天沢 えーっ、そうだったんですか。
――でも、結果的に『キックス』にも歴史小説的な要素とか偽史的な要素が入って『地図と拳』に接近した。
天沢 あのへんは本当に、小川さんのやってることの影響を受けてますね。
小川 やってみてどうでした?
天沢 快調に書き進められました。
小川 過去とか歴史を書くこと自体、SFと近い気がするんですよね。たとえば戦時中のシーンを書くとして、このガジェットは戦時中あったかなとか、いちいち気にしなきゃいけない。SFの場合も、八十年後の未来を書く時って、スマホ出していいのかなとか気にする必要がある。時代が違うからこそのリアリティが問題になるんだけど、僕の場合はそれがむしろ助けになったりして。『キックス』もやっぱり、阿部新市まわりの戦争中のエピソードなんかはすごくのびのびと書いてて。現代の場面でめちゃくちゃヤバいやつはいくらでもいるけど、結果としてあそこがいちばんえぐいみたいな。天沢さん自身も今までとは違う側面を『キックス』を通じて見せられてるんじゃないか。
――連載時からずいぶん直したっていうか、大幅に削ってますね。
天沢 元々千枚くらいあったのが、いま五百枚ぐらいに。
小川 ずいぶん削ったね。確かにめちゃくちゃテンポがよくて、パパッて進む。
天沢 アイドリングしてからじゃないと進められないから、毎回、小話みたいな無駄話を書いてたんだけど、それをばっさり削って。あとはキャラクターをめちゃくちゃ圧縮しました。こいつとこいつは性格とか立ち位置が似てるからガッチャンコしちゃおうみたいな。登場人物の数がすごく減った。
小川 確かにそれぞれキャラが立ってて、登場人物が区別しやすい。
天沢 無駄なく一気にすっきり行くみたいな書き方は僕はたぶん短編で学んだんですよ。なので、おそらく今回もそういった書き方になってしまっている。小川さんの書き方は全然違うじゃないですか。それこそ小話の集積を読んでいるうちにでかい話が立ち上がるみたいな。
小川 そうですね。あれは、自分が新しく出した要素が作品全体とがっちり噛み合うようにしていく作業をひたすら繰り返すみたいな感じで。うまくいかなかった場合、取り返しがつかないし、なかなか大変。もう一回やれって言われたらできるかわからないんで、おすすめはしませんね。『キックス』だと、贋作っていう軸と、伝承っていう軸がある。伝承自体、言わば贋作――実際に起こったことの偽物だったりする。その軸を自分の中で強く意識できると、さっき話に出た模造飛行機の話みたいに、一見関係ない材料がその軸と噛み合う。勝ちが確定してるというか、必ずそれが本筋に合流してくれるんで、無駄話が無駄話で終わらない。だから、自分で作品の軸を自覚しながら書くのが大事かもしれないですね。
天沢 なるほど。
小川 『地図と拳』の時は、建築が軸としてあったんで、いろんな話に建築の要素がどれぐらいあるかが指標になって、おかげで迷子にならずに進めたかもしれない。
天沢 いま小川さんがおっしゃったことって、改稿の段階でようやくちょっとだけ掴めてきた感じで。
小川 本当は初稿を書いてる間に作品がどこに向かっていくのかが掴めると、改稿がもっと楽になるし、初稿の精度も上がるんですよね。ただ、直してる瞬間にようやくわかることもある。それは僕もよくあることなんで。
天沢 改稿がとにかくたいへんで、死ぬまで終わんねえと思いました。改稿の前に大森さんに言われたんですよ。未練たっぷりに中途半端に残したり、無駄に書き加えたりせずに、どうせならひと思いにバッサリ切ったほういいって。それでバサバサ削りました。
小川 この本はそれがよかったんじゃないですか。バイオレンス感があるし。

滋賀から埼玉へ
小川 滋賀ってじっさい治安悪いんですか? 『翔んで埼玉』みたいな。もちろんあの通りの世界が広がってるとは思わないけど、滋賀で不良ものをやることに滋賀県民は一定程度の納得感があるのかという。
天沢 断定は控えますが、柄の悪い人たちもちらほら見かけはします。妻が先日コンビニ前で学生に声かけられて、「お金渡すんでタバコ買ってくれませんか」ってパシリをさせられそうになってて。主に妻が被害に遭ってます。
小川 かわいいね。だって、作中に出てくるやつだったら普通にコンビニ行って店員ぶっ殺してみたいな世界だから。
――『すべての原付の光』刊行時のインタビューで、天沢さんは滋賀に対するアンビバレントな感情を告白してましたね。本人は滋賀県生まれだけど、お母さんは埼玉県出身だから、家の中では関西弁を使わない。だから保育園で初めて周りの空気を読んで、後天的に習得した関西弁を使って話を合わせたという。滋賀は地元なのに永遠に外国みたいな。
天沢 うん、ずっとそうですね。
――それで今回は主人公が埼玉出身。作中にも関西弁がまったく出てこない。
小川 なるほどね。すごく素直な読み方としては、埼玉出身の映画フリークの純朴な青年が親友の死を境にどんどんワルと付き合ってのし上がっていくピカレスクロマンみたいな話ではあるんだけど。実際読んでみるとヤンキー文化的な伝説の詰め合わせみたいな要素もあって、それが序盤から中盤にかけてサクサク読めていく要素になってる。そこのエピソードが一個一個面白いんで。
――不良伝説って根強い人気がある。
小川 誰かに作ってほしいっすよね。各地のヤンキーの間で伝えられている伝説をまとめた本。うちのゾクのとか、先輩のお兄ちゃんがとか、地元でいちばん喧嘩強いやつとかの伝説。
――『アメトーーク!』でもやってるような。地方出身芸人が語る、地元でいちばんこわい先輩の伝説。
小川 そういうのをちゃんと収集して、本にしてほしいと思いましたね。『キックス』はそれを創作としてやってるというか。
――僕は『男一匹ガキ大将』世代だから、琵琶湖統一してから東京に攻め込んで天下統一する話かと。
小川 実質そういう終わり方じゃないですか。統一はしたっぽい感じになってる。
天沢 最後一瞬そうなってる。直接は書いてないって感じ。
――最後は池袋に戻ってもよかったよね。池袋始まりだから。『花束みたいな恋をした』みたいな。
小川 あ、そうそう。最初、ラブストーリーだね。完全にBL。最後までBL的な側面もあるんだけど、ちょっと想像とは違う展開で。序盤であっさりその相手が死んでしまい……。
――そっくりの双子が出てくる。
小川 『タッチ』か。
天沢 ほんとだ。『タッチ』だ(笑)。
小川 喧嘩してドラッグやってヤクザと戦って勝つ『タッチ』。
――「これが俺の甲子園だ」(笑)。浅倉南が主人公の、不良版『タッチ』。
小川 たしかにね。『キックス』自体もストーリーは王道なんで、重なる部分が多いのかな。
――小川さんもむかし、ヤンキー小説の短編を書いてますね。
小川 僕が「最後の不良」を書いた時点では、カルチャーとしてのヤンキーはもう途絶えつつあった。別に絶滅から守ろうみたいな話でもないんだけど、小説でもこうやってちゃんと書いて残していくことには価値があると思いますね。すごく面白い特殊な文化だと思うんで。しかも、『キックス』を読んでいても思ったけど、ヤンキー文化自体が国家や社会のメタファーになる。だから、ヤンキーについて書くと、結局戦争とか国家とかについて書くことになる。
――文体的にも、ところどころヒップホップ風というか、今までのサイバーパンクの文体から意識的に変えたのかなと思う箇所があったけど。
天沢 どっちも同じ感じで書いてるつもりでした。
小川 僕も文体はそんなに変わってる印象はなかった。固有名詞を畳みかけたりする感じも、デビュー当時からあるイメージ。
――「全部滅茶苦茶になって頭はパー」のリフとか、ラップ調だなと思ったけど。日本語ラップを山ほど聴くようなこともなく。
天沢 そんなに意識してなかったですね。僕のリリックの原体験がBLANKEY JET CITYなので。
小川 暴走族じゃん(笑)。
天沢 BLANKEY JET CITYのリリックのノリで小説を書いたらこうなるみたいなことをずっとやっている。
小川 へえ。面白い。
天沢 それがサイバーパンクとかヤンキー小説と親和性が高いんだと思います。
小川 なるほどな。
天沢 ヒップホップの文脈だと、舐達麻が埼玉なんですよ。僕、半分が埼玉なんで、そこはちょっと影響あるかもしれない。埼玉、書いてみたいんですよね。母の従姉妹にあたるおばちゃんが、埼玉県の荒川近くで旅館をやっていて、彼女の旦那さんが最近亡くなったんだけど、作家志望だったらしいんですよ。そのへんもいつか掘ってみたい。
小川 埼玉と滋賀ってほぼ一緒なんですよ。大阪が東京で京都が神奈川だとして、そういう都会に割と近いんだけど、内陸で観光資源なくて、でも人は住んでるみたいな。埼玉には越谷レイクタウンていう、琵琶湖みたいな巨大モールが……。
天沢 越谷レイクタウンと琵琶湖を結びつける(笑)。
――琵琶湖の方がだいぶ広いけどね。SFにするんなら、琵琶湖の真ん中に巨大人工島を作って独立国をつくるみたいな話もできるよね。
天沢 昔そういう計画があったらしいんですよ。しかも本当にかなりSF的な。でかいチューブを通して島の周りに道路を巡らせるとか言ってる計画書を見ました。
小川 で、埼玉県だけが国家承認してくれる。
天沢 なんとしてでも埼玉と結びつける(笑)。
――さっきも話に出たけど、『翔んで埼玉』の第二作が『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』だしね。関西でいちばん埼玉っぽいという共通了解がある。
小川 「成瀬」も西武でしょ。あれも埼玉ですからね。だから「成瀬」は、滋賀小説と見せかけて埼玉小説でもあるんですよ。
――成瀬がライオンズのユニフォームを着て出てくる時点で……。
小川 もう繋がってる。深い部分で繋がってるのよ。
天沢 やっぱり次は埼玉小説を書くしかないか。
――最終的にどういう作家になりたいの?
天沢 SF作家は卒業して……。
――衝撃告白。SFは踏み台だった!
小川 言い方ね。「SFだけじゃなく、いろんな小説が書ける作家になりたい」と言っておかないと。
天沢 はい。いろんな小説が書ける作家になりたいです。
――先輩を見習ってがんばってください。ありがとうございました。
プロフィール
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天沢 時生 (あまさわ・ときお)
滋賀県近江八幡市安土町出身。2018年「ラゴス生体都市」で第2回ゲンロンSF新人賞、19年「サンギータ」で第10回創元SF短編賞を受賞。著書に『すべての原付の光』がある。
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小川 哲 (おがわ・さとし)
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。『ゲームの王国』(2017年)が第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。『嘘と正典』(2019年)で第162回直木三十五賞候補となる。『地図と拳』で第13回山田風太郎賞、第168回直木賞を受賞。
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