恥ずかしい時、悔しい時、モヤモヤする時……思わずネガティブな気持ちになったときこそ、読書で心をやすらげてみませんか? あの人・この人に聞いてみた、落ち込んだ時のためのブックガイド・エッセイです。
第34回:ストレスで本読めない時
案内人 大田ステファニー歓人さん
2024年09月17日
読めないっすよそりゃそんな目の下のクマじゃ。これすか? 普通にカフカっす。 主人公起きたら、でっかい虫になってて、家族からだるい状況だるがられてるうちストレス溜まって………、ネタバレ平気すか? 先輩も溜まってて読めないんでしたっけ? 先輩無気力すね。あ、じゃ自分、次こっちなんでまた。
元気になった先輩が『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』をくれた。「ガス田のそばでガス欠はあかんな。けどストレス社会、熱変換したら生きやすいで、虫にもなれるしな、あ、前の不条理読まして?」交換だった。

ほんまの虫てこんなん究極のストレス状況やけど認知的再評価チャンスやん。ストレスマインドセット変えてな、危機も成長の糧て思わな。ザム氏やって「この経験から何学べるか」って内省せんと。確かに親にはいかつい社会的ストレッサーなんわかる。でも一緒に乗り越えたらんと。逆境こそ対人関係深化させる契機やって。ストレス下で分泌されるオキシトシンいうんが実は社会的絆強すんねんから。ザムやん無理なら家族がガンガン話しかけんと。目逸らしてもあんたがおかんやで。ザムやん踏まれんよう壁這うたり、健気やん。虫板についたな。ストレス誘発性成長の好例やん。適度なストレスが神経可塑性を促進してすぐ潜在能力開花て、ザムっさんの身体的適応もろ人間の驚異的な回復力を象徴しとるて。虫も一緒や。家族冷たくてもな、重要なん意味のあるストレス概念やろ。家族のためいうストレスが強力な内的動機付けやって、ザム知っとこ。意味ある痛みやねん。
ザムが動かん。ストレスて心で感じんのに続くと身体機能あかんな。けど、ザム最期家族のそばで良かった思お。みんなやって虫扱いしなかったかもやん。心的外傷後成長や。逆境は大切なもん知るきっかけ。意味あんねん。

『カフカ ポケットマスターピース01』多和田葉子/訳(集英社文庫ヘリテージシリーズ)収録
無いっす。「いやチャレンジやん、回避あかんて。ストレスは変換しかないて。このパラダイムシフトがレジリエンスを高めるんや」あっそ。『変身』読むストレスでネガポジ逆転か。うわ蚊だ、やっぱ虫やだ。
で手が血で汚れる。殺される側の意味の無さだけが不条理じゃないって気づく。虫になって初めて、ずっと殺される側だった、って思い知る。で意味を奪って不条理を押し付けてた自分を知る。人だって意味なく殺されまくってる。人によって不条理が生産される不条理。不条理の意味を無視してたら、みんな起きて虫みたいに殺されるかも。
プロフィール
-
大田 ステファニー 歓人 (おおた・すてふぁにー・かんと)
1995年東京都生まれ。2023年、『みどりいせき』で第47回すばる文学賞受賞。24年、同作で第37回三島由紀夫賞受賞。
関連書籍
新着コンテンツ
-
インタビュー・対談2026年08月10日
インタビュー・対談2026年08月10日『ノー・ファンタジー』刊行記念対談 上田岳弘×川村真司「現実を生き抜くためのファンタジー」
映像、広告、デザインの領域で世界的に活躍し、上田さんの作品に関心を寄せてこられたクリエイティブディレクターの川村真司さんとの対談が実現!
-
お知らせ2026年08月07日
お知らせ2026年08月07日『ハヤブサ消防団 森へつづく道』発売記念 サイン本プレゼントキャンペーンのお知らせ
『ハヤブサ消防団 森へつづく道』の発売を記念し、著者の池井戸潤さんの直筆サイン本をプレゼントするキャンペーンを実施いたします。
-
インタビュー・対談2026年08月07日
インタビュー・対談2026年08月07日池井戸潤×逢坂 剛「自分の領土を、どんどん開拓する。作家は、「馬力」で勝負です。」
柴田錬三郎賞を受賞した『ハヤブサ消防団』。選考委員のひとりである逢坂剛氏をゲストに、それぞれの小説論、エンタメ観について語り合う。
-
インタビュー・対談2026年08月06日
インタビュー・対談2026年08月06日上田岳弘「漂流する時代、ファンタジーという生命線」
執筆と前後して小説家としてのターニングポイントを迎えたという上田さんの「現在地」について詳しくお聞きしました。
-
お知らせ2026年08月06日
お知らせ2026年08月06日すばる9月号、好評発売中です!
読切短編は井上荒野さん、本谷有希子さん、沼田真佑さんの3本立て。現在選考が進んでいる今年度すばる文学賞、予選通過作発表!
-
インタビュー・対談2026年08月05日
インタビュー・対談2026年08月05日池井戸潤「過去と現在の「接点」を探して」
柴田錬三郎賞受賞作にして中村倫也主演でドラマ化され大ヒットした池井戸潤初の“田園ミステリ”、待望の続編執筆の日々、その格闘を振り返ります。