内容紹介
週6日の練習で、目指せ全国大会!
――部活動って、そんなに頑張らないとダメですか?
部活動の顧問≒タダ働き、にもかかわらず、
学校の先生は「子供達のために」今日も残業地獄。
中高生とその親世代から、いま最も信頼される著者が、
教育現場の理想と現実に迫る、学校変革小説!
都内の公立中学校で、ひとりの音楽教師が過労死した。
働き方改革の命を受け、教育庁から赴任した新校長が掲げたのは、
「定時帰り」「部活動廃止」「完全週休二日制」。
同僚の訃報に「次は私かも」と怯える、英語教師の亜梨子。
勉強で負けても、部活では私立中に勝ちたいバレー部部長の一花。
子供達の青春の場を守ろうと、使命感に駆られる保護者会会長の優佳。
それぞれの立場から「学校」のあるべき姿を見つめ直す、再生の物語。
プロフィール
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額賀 澪 (ぬかが・みお)
1990年茨城県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年に『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞、『屋上のウインドノーツ』(『ウインドノーツ』を改題)で第22回松本清張賞を受賞。『イシイカナコが笑うなら』『競歩王』『タスキメシ―箱根―』など著書多数。
書評
葛藤と痛みを見つめる書
内田良
ページをめくる指が、重く感じられた。
これまで私は、過労で未来を断たれた教師の遺族に複数出会ってきた。命を落とさないまでも、「子供のため」に自己犠牲を強いられることへの不満も、数えきれないほど聞いてきた。一方で、教職に深いやりがいを感じているとの声もまた、現場に多くあふれている。
教師の長時間労働を、素朴に害悪だと描くことはできない。教師として満たされる場面もたしかにある。だが、教師が倒れている。教壇を去ろうとしている。だからこそ、学校の働き方改革は進められなければならない。
額賀澪さんが大人と子供の関係を描くとき、私はいつも、子供と対等に向き合おうとする大人の覚悟に胸を打たれる。
働き方改革の急先鋒である宇佐崎校長は、着任時の生徒向けの挨拶で、「あなた達にするのは相応しくないかも」と前置きしつつ、同校で一人の教師が「過労死」したことを丁寧に説明した。主人公の藤木先生は、「部活動廃止」を掲げる宇佐崎校長と、もっと練習したいバレー部部長の七原さんとの間で揺れ動きつつも、七原さんに対して「誰かに負担を押しつけて平気な顔をして生きることを、生徒にしてほしくない」と、自身の思いを告げた。
パターナリスティックに子供を囲い込み、情報を統制するのではない。人の痛みに、人として向き合う。そこに、大人と子供の境界はない。自分の立場が何であろうと、さまざまな葛藤を抱えようと、人の痛みを見過ごしてよい理由にはならない。
膨大な教育活動は、教師の長時間労働によって支えられてきた。問題は、そのことに私たちが長らく無自覚であったことだ。私はこうした状況を「学校依存社会」と呼んでいる。藤木先生の問いかけは、作中の生徒だけでなく、私たち自身にも向けられている。誰かに負担を押しつけて平気な顔をしてきたのは、いったい誰なのか。藤木先生の言葉に、ぜひ耳を傾けてほしい。
「青春と読書」2026年9月号転載
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