内容紹介
高校生の頃から、谷川俊太郎は詩人だった。
デビュー前、都立豊多摩高校文芸部員だった頃の詩「つばめ」や、「詩のボクシング」で即興朗読された「ラジオ」、映画「『谷川さん、詩をひとつ作ってください。』のために書き下ろされた表題詩を含む84編を収録。
【「つばめ」が掲載されたのは都立豊多摩高校文芸部編輯の復刊第二號『豊多摩』、発行は一九四八年四月でした。級友の北川幸比古に誘われて詩を書き始めて間もなくのころだったと記憶しています。第一詩集『二十億光年の孤独』に収めた詩は、みな大学ノートに清書されていますが、これはそれ以前の作で原稿はありません。私は高校四年生、文芸部員として一応編輯室に名を連ねています。(谷川俊太郎)】
また谷川さんに会いたい、すべての人へ。
(編集部註:この本は、谷川俊太郎氏の詩集として単行本化されていない詩で編まれていますが、他の著者の単行本に寄せた詩等が一部含まれます。)
プロフィール
-
谷川 俊太郎 (たにかわ・しゅんたろう)
1931年東京生まれ。詩人。52年、詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。詩をはじめ、作詞、翻訳、絵本など様々な分野で活躍。62年「月火水木金土日のうた」で日本レコード大賞作詞賞、75年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、83年『日々の地図』で読売文学賞、93年『世間知ラズ』で萩原朔太郎賞、2006年『シャガールと木の葉』『谷川俊太郎詩選集1~3』で毎日芸術賞、16年『詩に就いて』で三好達治賞受賞。24年11月逝去。
書評
応答と発信
日和聡子
『詩人S 谷川俊太郎単行本未収録詩集』は、二〇二四年一一月に亡くなった詩人・谷川俊太郎氏の、単行本化された自身の詩集には収録されていない詩八四編を収める。
収録作は、発表された時期も媒体も多様である。最も古いものは、一九四八年、著者の高校時代に発行された「豊多摩」復刊第二號(都立豊多摩高等学校文芸部)に掲載された「つばめ」。〈ループイムメルマンターン ダイヴ…/美しい線を画いて楽しげに全く楽しげに/飛び交ふつばめ〉とはじまる本作は、このあとに刊行される第一詩集『二十億光年の孤独』(一九五二)にもつながる清新さを持ち、当時の空気に混在する新旧の香りと鮮明さを感じさせるとともに、生命に対するまなざしや捉え方、それらをシンプルな言葉でかろやかに描くなど、のちの著者の特色をすでに備えたものとして注目される。
また本書には、著者が翻訳を手がけたことでゆかりのある「スヌーピー展」をはじめ、さまざまな展覧会やイベント、雑誌や共著、他者の作品に対してなど、折折の機会や対象に寄せて書かれた詩が数多く収録されている。表題作「詩人S」は、映画『谷川さん、詩をひとつ作ってください。』(二〇一四)のための書き下ろし。著者本人を思わせる〈詩人S〉のあり方が滲む最終部が心に残る。〈情報でも意見でも説明でもないコトバ/自己憐憫でも自己主張でも自己表現でもないコトバ/木っ端のような石ころのような水たまりのようなコトバ/辞書から脱走しテレビからこぼれ落ち/新聞を尻目に雑誌を黙殺し/(中略)/闇を味方にして人の虹彩を焼くコトバ//に焦がれてSは今日も途方に暮れている〉
職業としてまた一個人として、公的にも私的にも、長きにわたり詩人として応答し発信した。その多彩な活動のなかで数多く生まれ、読まれてきた作品群に、新たなこの一冊が加わった。詩が寄せられた対象にも想いを馳せながら、それらと合わせて読む楽しみももたらされた。
「青春と読書」2026年5月号転載
新着コンテンツ
-
インタビュー・対談2026年07月20日
インタビュー・対談2026年07月20日『宮崎駿の詩学』刊行記念インタビュー 赤坂憲雄「宮崎駿の中心にある、世界を考えるための「問い」」
宮崎駿の作品たちは今、私たちにいったい何を示してくれるのか。赤坂さんがこの本に込めた思いを伺った。
-
インタビュー・対談2026年07月17日
インタビュー・対談2026年07月17日『夜の恩寵』刊行記念対談 三浦しをん×石宮恵子(臨床心理士・公認心理師)「日常と非日常のあわいで」
本作を臨床心理士・公認心理師の岩宮恵子さんはどう読んだのか。物語の発端と、母性の呪縛にも連なる本作の魅力について語っていただきました。
-
インタビュー・対談2026年07月17日
インタビュー・対談2026年07月17日千早 茜×藤本悌志(香老舗 松栄堂・調合師)「香りを編む、言葉を燻らす」
今春、金沢21世紀美術館にて開催された「言葉でつなぐ、私と香り展」で行われた千早茜さんのトークセッションの様子を載録いたします。
-
お知らせ2026年07月17日
お知らせ2026年07月17日小説すばる8月号、好評発売中です!
池井戸潤さん、佐藤雫さん、三浦しをんさん×岩宮恵子さん、千早茜さん×藤本悌志さんの刊行記念対談&インタビューをたっぷりと!
-
インタビュー・対談2026年07月06日
インタビュー・対談2026年07月06日赤坂憲雄×三浦しをん「豊かな読みの世界への誘い」
新刊を上梓したばかりのお二人が、お互いの著作についてじっくりと語り合う特別対談が実現!
-
お知らせ2026年07月06日
お知らせ2026年07月06日すばる8月号、好評発売中です!
宮本輝さんの新連載が始動!新作読切は小野正嗣さんと木村紅美さんの2本立て。